1. 10)海洋文化館の利活用促進にかかる事業
沖縄美ら島財団総合研究所

普及啓発の取り組み

10)海洋文化館の利活用促進にかかる事業

板井英伸*1

1.はじめに

太平洋島嶼域や沖縄の海洋文化に関する展示を行っている海洋文化館の魅力を発信し、知名度の向上と利用促進を図ることを目的に、「海洋文化講座」と題し、島々の海洋文化を題材とした一般向け館内ガイドツアーおよびギャラリートークを実施した。実施にあたり、総合研究センターが行っている海洋文化に関する調査研究の成果を積極的に活用し、発信した。

2.海洋文化講座の実施

今年度は7回の海洋文化講座と2回のサバニに関するワークショップ・講演会を予定していたが(表-1)、新型コロナ感染拡大防止の観点から10月初旬までの2回の海洋文化講座と、それ以降に予定されていた名護市安部、嘉陽集落ならびに美ら島自然学校での講座およびワークショップ各1回が中止となり、実施回数は5回にとどまった。実施できた5回に関しては、テキストをそれぞれ製作した。
参加者総数は48名で、前年度比75.0%と減少した。ただし対定員比は96.0%に達しており、新型コロナ感染拡大防止の観点から通常20名の定員を10名に削減した影響もあると思われる。
参加率が100%に達する講座があった一方で40%にとどまる講座もあったことから、今後の改善点として、事前告知の強化と新しいコンテンツの創出があげられる。

1)こだわりのガイドツアー

対象は高校生以上で、3回を海洋文化館で実施した。名護市安部地区、嘉陽地区、美ら島自然学校で実施を予定していた2回の講座と1回のワークショップは、新型コロナ感染拡大防止の観点および地域への配慮から中止した。
海洋文化館で実施した3回の講座のうち、太平洋の人類拡散と伝統的航海術に関する2回は、国事務所との協議に基づき、今年度から新たに国営部担当の講習会と連携して実施したものである。残る1回は沖縄の伝統的な木造漁船サバニの造船技術をテーマに、解説を行う形で実施した(写真-1)。本事業について、マスコミ(沖縄映像センター)による取材を受けた。

2)ギャラリートーク・講演会

高校生以上を対象とし、海洋文化館・交流ゾーンのステージで2回、開催した。テーマとして、仮面・仮装の来訪神儀礼を取り上げ、沖縄と太平洋の事例を比較しつつ、スライドや動画の上映を行うとともに、参加者も交えた対話を行った(写真-2)。また、沖縄の伝統的な木造漁船サバニの造船技術をテーマに選び、映像などを交えながら解説する講演会も実施した(写真-3)。マスコミ(沖縄映像センター、沖縄タイムス社)による取材を受けた。

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    写真-1 こだわりのガイドツアー
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    写真-2 ギャラリートーク
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    写真-3 講演会

表-1 令和2年度 海洋文化講座一覧
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3)新しい試み

新型コロナ感染拡大防止の観点から講座、講演の実施に制約が生じる中、新しい試みとして、3月に実施した講演会「琉球・沖縄の船」のWeb配信を試行した。初の試みであることから、今年度の配信対象を関係者に限定したが、技術的には可能であることが確認されたため、次年度以降の実施に向け、さらに検討を進めることとした。

3.外部評価委員会コメント

今後はzoomやウエビナーなどを活用して、オンラインで相互的な情報発信に務めて頂きたい。
日本オセアニア学会のNLには定期的に活動の情宣を目にできたのは評価したい。
(後藤顧問:南山大学 教授)。
本年度は、新型コロナウイルス感染拡大により、中止を余儀なくされた講習会もあるが、10月以降は講習会と連携した事業を積極的に展開した点は高く評価できる。また、テキストを用意した講座の公開も海洋文化館の学術研究のレベルの維持と多くの人びとへのその存在周知に大きく寄与すると考えられる(須藤顧問:堺市博物館 館長)。


*1普及開発課

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