普及啓発の取り組み
令和元年10月31日の首里城火災により、首里城に収蔵されていた美術工芸品の多くに被害があった。1,510点の内391点が焼失、焼失を免れた1,119点にも火災の熱などによる被害が一部見られた。
火災直後には、財団職員及び専門家による美術工芸品の状態確認調査を行い、緊急的な修理が必要な収蔵品には修理・クリーニング措置を行った。
令和元年12月には、絵画・漆器・染織・保存科学などの専門家による第三者委員会「首里城美術工芸品等管理委員会」を設置、令和3年3月までの計4回の委員会で報告書がまとめられ、その内容に基づき、被災した美術工芸品の修理方針等について提言を賜った。
「首里城収蔵品パネル展」は、火災から1年が経過するにあたり、状態確認調査が終わった美術工芸品の現状について、また前述の委員会などの活動について広く報告する目的で開催した。
(1)期間:令和2年10月31日~11月3日
(2)場所:沖縄県立博物館・美術館エントランス
(3)内容:首里城基金などを活用し収集した美術工芸品の現状や修復状況、今後の取り組みなどをパネル及び実物で報告。パネルはB2サイズ、全10枚で、各章題は「首里城公園の建物位置関係」、「美術工芸品の被害概要」、「各分野の被害報告」、「緊急措置報告」、「今後の予定について」、「首里城基金」についてであった。
ページ数の関係から展示したパネルを抜粋して報告した。後述する「首里城基金HP」で公表した内容をパネルとして表した。
(1)「美術工芸品の被害概要」
このパネルでは前述の焼失数・残存数の他に、令和2年10月現在での状態確認調査数、要修繕数を表にして報告した。令和2年現在での状態確認未調査は漆器173点、陶磁器4点だったが、令和3年3月時点ではそれらも状態確認を終え、残存した1,119点の確認を終えている。
要修理数については、パネル展開催時には絵画6点、漆器112点、染織19点、書跡5点、陶磁器20点、金工品その他32点であった。
(2)「各分野の被害報告」
この報告は、焼失を免れたが比較的被害が顕著に見られた「絵画」「漆器」「染織」の3分野パネルそれぞれ1枚計3枚と、「書跡・陶磁器・金工品その他※刀剣」の1枚のパネルからなる。
「絵画」では復元模写の顔料が黒変している様子、「漆器」は漆塗膜の浮きや亀裂が発生している様子、「染織」は染料の褪色や繊維に入り込む煤の様子などを写真付きで展示した。
「書跡・陶磁器・金工品その他※刀剣」については残存資料に大きな被害が見られなかったものの、刀剣については笄(こうがい)や小柄(こづか)に錆などが見られた様子を写真付きで展示した。
(3)「緊急処置報告」
火災時に南殿特別展示室で展示中だった資料は焼失を免れたものもあったが、ダクトなどから煤が入り込み資料に付着していた。当該資料について、漆器の修理技術者にクリーニングを依頼し煤を除去した様子を、措置前後の写真を比較して展示した。
また収蔵庫にあった漆器の多くは、火災の熱などの影響により資料を包んでいる薄葉紙が漆器本体に付着しているものがほとんどであった。塗膜の劣化が進んでいる資料については、薄葉紙を剥がす際に剥落の恐れがあるため、令和3年度に修理技術者により紙剥がしの作業が行われた。その作業の様子を写真付きで展示した。
(4)「今後の予定について」
本パネルでは「首里城美術品工芸委員会」を設置し、修理方針や管理マニュアルについて各分野有識者に議論を重ねて頂いていることを報告した。パネル展開催時には第2回委員会まで開催していたが、令和3年3月時点では全4回を終了し、修理方針や管理マニュアル等について提言を頂いた。それらを元にこれからの修理計画等を財団で検討していく。
沖縄県立博物館・美術館で展示したパネルを首里城公園首里杜館ビジターロビーでも展示した。その他「首里城WAON」で首里城基金に寄付を頂いているイオン琉球の協力の元、イオン南風原ショッピングセンター1階でも、首里城基金の解説に併せて本パネルを抜粋して展示した。
また首里城基金HP(URL:https://oki-park.jp/shurijo/fund/5484)でもパネルと同内容の報告を行った。最新の情報は随時HPを更新し報告していく。
火災以降首里城基金への多額の寄付が県内外から寄せられ、また首里城復元を願う寄せ書きやアート作品なども寄贈されている。
復興を願う多くの方々に応えるためにも、修理・復元を継続的に進め、「首里城収蔵品パネル展」のような進捗状況をHPや展示会で報告していく計画である。
*1琉球文化財研究室
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