海洋生物の調査研究
タイワンハブは台湾および中国南部、インドシナ半島北部などに広範囲に生息する有毒ヘビの1種であり、特定外来生物に指定されている。沖縄県内では、1993年に名護市での定着が確認されて以降、分布域は拡大しており、外来種対策や公衆衛生上の観点から生息数を減少させる必要がある。そこで本事業では、名護市の複合施設「なごアグリパーク」におけるスタッフや来客の咬傷リスクの低減を目的とした防除活動を通して、効果的な防除手法の開発を目指し、以下の取り組みを実施した。
なごアグリパークでは、2017年からタイワンハブの駆除を実施しており、2018年11月からは施設外縁に侵入防止柵(ナイロン製ネット750m分)を設置し、柵の内外の捕獲状況から、侵入防止対策の効果の検証を試みている(写真-1)。
侵入防止柵の設置から約2カ年の間に、柵の外側では55個体が捕獲された一方、内側では1個体も確認されなかった。したがって、侵入防止柵はタイワンハブの侵入を制限する高い効果があると評価された。
前項の防除と並行し、捕獲によって得られた個体を用いて、生態学的情報の収集も行っている。本調査では侵入防止柵の外側で捕獲されたタイワンハブの大きさや性別を記録するほか、解剖によって胃内容物の有無などを確認した。その結果、捕獲個体の性比はほぼ1:1で性別の偏りはなく、雌雄ともに多くの個体が未成熟であった。また、駆除事業を展開する自治体への聞き取り調査により、タイワンハブの分布は急速な拡大傾向にあることも明らかとなった。
現在、ハブ捕獲トラップには誘因用の餌として生きたハツカネズミが使用されている。しかし、ネズミの管理およびトラップの見回りに多くの労力が必要であるとともに、近年社会的にも関心が高まっている動物倫理の観点からも生体に頼らない誘因餌の開発が望まれている。そこで、当財団では、ハブ類が獲物の特定に使用する嗅覚と温感に着目し、人口の誘引餌の開発を試みている(写真--3)。現在までに複数の試作品を作成したものの、現在のところ捕獲に至るデバイスの開発に至っていない。
近年、デバイスに通信機能を搭載することで、機能を大幅に向上させるIOT(Internet of Things)化が様々な場面で導入されている(写真-4)。そこで、タイワンハブ捕獲用トラップに通信機能を付帯し、捕獲時や異常が生じた場合に通知する機能を持たせられれば、中枢管理が可能となり、見回りの頻度を下げるなどの大幅な省力化が可能となる。現在、当財団も参画している世界自然遺産推進共同企業体の取り組みの一環として、NTTドコモと共同で通信システム搭載のトラップ開発を進めている。本年度は複数の市販通信装置を試行し、それぞれの問題点を抽出した。これをもとにタイワンハブトラップに適切な通信装置の開発を進める。
タイワンハブの分布は近年急速に拡大しており、海洋博公園の目前まで迫っていると考えられる。来年度以降も駆除の効率化を目指した技術開発を加速させるとともに、これまでの防除に関する知識を海洋博公園および近隣地域に応用し、地域の公衆安全に寄与する。
タイワンハブに関して考えるとその駆除は容易ではない。しかし、その捕獲技術や駆除手法に関してはかつてのハブ研究所の膨大な資料があるはずである。それをまずしっかりと読むべきであろう。また、増えることはそれなりにニッチがあることを示している。同じような生態を持つヘビ類やその他の動物について注意を払って研究すべきであろう。
(亀崎顧問:岡山理科大学 教授)
*1動物研究室 *2水族館事業部 魚類課
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