普及開発課においては、当財団が実施している亜熱帯性動植物・海洋文化等に関する調査研究の成果や公園管理で培った技術等を活用し、沖縄の自然や文化等に関する知識の普及啓発を実施している。主な事業としては、教室や講習会の実施や、助成事業、人材育成事業、環境保全活動支援事業、学校連携事業等である。また、普及啓発事業に加え海洋文化に関する調査研究事業を実施しているほか、美ら島自然学校(名護市嘉陽)の管理運営を担っている。平成31年度事業の概要は以下のとおりである。
普及開発課の体制は正職員6名、契約職1名、事務補助3名、また、美ら島自然学校では飼育及び事務補助計2名が従事している。
主に親子を対象に、海の生物について学ぶ「美ら海自然教室」を6件、植物や陸の生物について学ぶ「美ら島自然教室」を2件、植物素材等自然発生物や廃棄物等を利用した工作を通し沖縄の生き物や自然環境を学ぶ「美ら島・美ら海こども工作室」を5件開催した。主に小中学生を対象とした「美ら島自然学校学習会」を10件開催し、より身近な環境で観察できる生き物や自然に焦点を当てた体験学習を行った。また、今年度初の試みとして、海洋文化に関する学習会を、親子対象に開催した。海洋文化館において、展示資料に用いられている植物素材に着目した学習を行った。
一般や専門家を対象とした事業としては、サンゴ礁自然誌講座や研究室による講演、「海洋文化講座」等を計14回実施した。専門家向けとして実施した事業では、有藻性サンゴの同定スキルを獲得するための「サンゴワークショップ」の応用編として、新たな取り組み「野外観察」を実施した。参加対象者は、過去にサンゴワークショップに参加し、室内での同定技術を学んだ方のみとし、野外で実際にサンゴの生体を観察することにより、同定技術のさらなる向上を図った。
地域の教育委員会、小学校と連携し、学校のカリキュラムとしての学習を行う通年学習プログラムと、学校からの依頼をうけて行う1回完結型の学習プログラム(出前授業)を実施した。通年プログラムとしては、名護市の緑風学園において「ウミガメ」「川の環境」「海の生物」等を題材としたプログラムを5学年で計30回提供したほか、名護小学校等において4校計16回実施した。1回完結型のプログラムについては、17校計19件を単元授業や修学旅行の学習等において実施した。
沖縄美ら島財団の事業内容を活かした講義を開設し県内の大学へ提供し、沖縄県における高等教育を支援することを目的として、名桜大学(名護市)、琉球大学(西原町)において、寄附講座(全15回)を開講した。財団職員が講師として、大規模公園や水族館等の管理運営など財団の事業や亜熱帯性動植物に関する調査研究、首里城等に関する調査研究について講義を行った。受講者は名桜大学が117名、琉球大学が114名であった。
総合研究センターにおける調査研究項目である亜熱帯性動植物や沖縄の歴史文化に関する調査研究・技術開発、普及啓発活動に対して助成金による助成を行った。応募総数35件の中から、亜熱帯性動物に関する調査研究3件、亜熱帯性植物に関する調査研究2件、沖縄の歴史文化に関する調査研究に1件および普及啓発活動1件への助成を決定した。
沖縄の将来を担う人材を育成することを目的に、県内の新聞社が主催する事業に共催した。
沖縄タイムス社が主催する「沖縄こども環境調査隊」については、小中学生計8人が隊員として選ばれ、事前学習会や現地視察を通して環境問題について学んだ。今年度は西表島を調査地とし、昨年に引き続き、奄美こども環境調査隊とともに活動を行った。
琉球新報社が主催する「新報サイエンスクラブ」については48件の応募があり、小学生26件、中学生4件の調査研究に対し助成を行うとともに、調査研究を支援するフォローアップを行った。
沖縄県北部地域並びに離島での海岸清掃や赤土流出対策等の環境保全活動を支援することを目的に、エコクーポン(沖縄美ら海水族館入館券)を提供する事業を実施した。2時間以上の海岸清掃活動や、赤土流出防止を目的とした植物の植え付け等の環境保全活動を対象としている。
平成31年度は14団体17件に対し、1,078枚のエコクーポンを発行し、発行枚数は前年度並みとなった(前年度は15団体1,084枚 対前年度比99.4%)。
総合研究センターの調査研究成果を活用し、知識の普及啓発を図るため、外部からの依頼により職員を講師として派遣した。平成31年度は、県内外及び海外からの依頼を受け、53件の講師派遣を行った。
名護市嘉陽小学校の跡地利用事業者として平成27年7月より「美ら島自然学校」の管理運営を実施している。常設プログラムや土日祝日の催事等、各種プログラムの開催、ウミガメ飼育施設で約100個体のウミガメ幼体の飼育、バーベキュー施設の運用等を行った。また、大型催事として「ウミガメまつり」を企画し、地域青年会や近隣施設との連携により開催した。
平成31年度の施設利用者数は、8,269名(前年度8,208名 対前年度比111%)であった。各種教室等プログラムの利用者数は3,319名(対前年度比153%)で増加した。
平成31年度は引き続き船漕ぎ儀礼の現況・変容の調査、海にまつわる民俗に関する基礎的情報の集積に加え、来訪神儀礼についても調査を行った。調査成果は、各実施地域へ提供し還元を図った。また、調査中に得られた副次的情報として、魚類の分布状況を示す資料を動物研究室へ提供した。前年度に引き続き、海洋文化館収蔵品に関するデータベースの確認及び更新、収蔵品を良好な状態で管理するために収蔵資料の劣化状況を調査した。
海洋文化館における誘客促進や普及啓発事業に活用することを目的に、「海洋文化講座」を継続実施した。館内で展示・収蔵されている太平洋や沖縄の島々の海洋文化に関する資料の特徴や展示の見どころを掘り下げたガイドツアー等を計7回行った。
実施日:令和2年3月3日(火)
委員:池田孝之(座長・琉球大学名誉教授)
亀崎直樹(岡山理科大学生物地球学部生物地球学科教授)
須藤健一(堺市博物館館長)
※後藤顧問(南山大学)は欠席
委員会では、事業全体で活発な普及活動および効果的な参加者確保がなされていると評価されたほか、美ら島自然学校の活用による地域への貢献や海洋文化に関する調査でのサバニ制作技術の継承について評価を受けた。今後の課題として、講演会等参加者の人数だけでなく、その属性、アンケートの結果なども網羅した報告の必要性が指摘された。次年度以降の事業評価に反映させる予定。
既存のプログラムにこだわらず、より効果的な手法、新たな題材の開発に取り組むなど、事業内容の改善を図る。また、より広範囲の利用者へ普及啓発を行うため、教材の貸し出し・提供などを含めた利用方法を検討する。また、継続して普及啓発事業の手法や効果について調査を行い、学術的に検討する。
*1普及開発課
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