普及啓発の取り組み
太平洋島嶼域や沖縄の海洋文化に関する展示を行っている海洋文化館の魅力を発信し、知名度の向上と利用促進を図ることを目的に、「海洋文化講座」と題し、島々の海洋文化を題材とした一般向け館内ガイドツアーおよびギャラリートークを実施した。実施にあたり、総合研究センターが行っている海洋文化に関する調査研究の成果を積極的に活用し、発信した。
今年度に予定していた海洋文化講座は全8回(表-1)であったが、新型コロナ感染拡大防止の観点から3月の講座は中止となり、実施回数は7回にとどまった。また、参加者総数は64名で、前年度比27.1%と減少した。今後の改善点として、事前告知の強化、講座内容の多様化があげられる。
対象は高校生以上で、4回を海洋文化館で、2回を名護市安部地区、嘉陽地区、美ら島自然学校で実施した。今年度は、沖縄や太平洋地域における海洋文化(造船技術や来訪神儀礼など海を視野に入れた社会のあり方や伝統的な文化の変化など)をテーマに選び、それらについて解説する形で実施した(写真-1)。名護市安部・嘉陽地区で実施した際には、マスコミ(オキナワグラフ、琉球新報、沖縄テレビ)による取材を受けた。
高校生以上を対象とし、海洋文化館・交流ゾーンのステージで年間1回、開催した。テーマとして仮面・仮装の来訪神儀礼を取り上げ、沖縄と太平洋の事例を比較しつつ、スライドや動画の上映を行うとともに、参加者も交えた対話を行った(写真-2)。外部講師には宮古島のパーントゥについて詳しい宮古島市史編さん委員の本永清氏に依頼し、講師が所有する未公開映像の提供を受けた。
(1)海洋文化講座『人と自然 サメと文化』
今年度は新しい試みとして、海洋文化館でのガイドツアーのうち1回を、動物研究室と協力して実施した。テーマには沖縄でも太平洋の島々でも身近なサメを取り上げ、最初に動物研究室職員が太平洋・沖縄に生息するサメの生物学的特徴についてスライドと標本を用いて解説し、その後、普及開発課員が海洋文化館の関連する展示品や映像資料について解説を行った。
アンケートでは「先生同士(専門家同士)のやり取りが興味深かった」という回答があり、異なる分野を担当する職員が協力してひとつの講座を実施する意義も明らかになった。
(2)親子向け・初心者向け講座の実施
新しい試みの2点目として、「おもしろ道具を探そう」と題し、対象を親子向け・初心者向けに広げた「美ら島文化教室」を実施した(詳細は「III-1-1親子、子どもを対象にした各種教室の実施」参照)。
サメを題材にして水族館と連携した企画は、監修者らがリニューアル会議の内で提案していた事項であり、それが実現されたことは喜ばしい。メーリングリストでどのような情報が交換されているのか、また種々の企画の参加者からどのようなレスポンスがあったかをぜひ明示化してほしい(後藤顧問:南山大学 教授)。
展示品と映像を通して入館者が太平洋島嶼世界と沖縄の伝統文化の多様性と共通性を理解し、新たな発見に喜びを見いだす場を提供することが海洋文化館のミッションの一つである。その目標に向けて館内ガイドツアーやギャラリートークを計画通りに実施し、またアウトリーチ等によって誘客を試みるなどの積極的活動は高く評価できる(須藤顧問:堺市博物館 館長)。
表-1 平成31年度 海洋文化講座一覧
*1普及開発課
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