1. 10)熱帯植物試験圃場植物展示活用実績
沖縄美ら島財団総合研究所

亜熱帯性植物の調査研究

10)熱帯植物試験圃場植物展示活用実績

鈴木愛子*1・稲田幸太*1・具志堅江梨子*1・小原弘之*1・端山 武*1・石川伊智子*2

1.はじめに

熱帯植物試験圃場では、生息域外保全及び調査研究、系統保存を目的として、約1万3000株の熱帯・亜熱帯性植物を管理している。これらの熱帯・亜熱帯性植物について、普及啓発を目的に、植物観察会や、熱帯ドリームセンターでの展示活用を行ったので報告する。

2.展示活用種及び展示方法

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表-1 展示活用種
1)展示活用種数

観賞価値の高い種、希少性の高い種などを中心に開花した株を展示に活用した。今年度は、フジボグサやホザキヒメランなどの希少種72種339株(表1:1~72)、ゾウコンニャクやビカクシダなど74種315株(表1:73~146)を熱帯ドリームセンター内にて展示及び植栽を行った。

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写真-1 展示状況(左:全体、右:マツムラソウ)
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写真-2 展示状況(装飾展示)右:ヒメミゾシダ
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写真-3 改修前
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写真‐4 改修後
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写真‐5 滝の設置作業
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写真-6 左:Platycerium grande
    右:Platycerium ridleyi

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写真-7 温室内展示風景
2)展示方法

(1)希少植物の展示
琉球列島産希少植物については、熱帯ドリームセンター、やんばるギャラリーにおいて、開花株の展示ケース内での展示及び、擬岩などを組み合わせた躯体に装飾を行う見本展示を行った。展示ケース内では育成管理数の少ない希少種を中心に陳列し、装飾展示では育成管理数の多いものやシダ類を中心に装飾を行った。

(2)常設展示温室内での植栽展示
熱帯ドリームセンター、ファレノプシス温室において、水景の修復を行うとともに、滝を増設し、沖縄に自生する植物を植栽展示するコーナーへの改修を行い、センカクアオイやコウトウシュウカイドウ、ホザキヒメランなど39種の植栽を行った。滝の増設には、軽量かつ取り外しの容易なFRP素材擬岩を製作した。

(3)ビカクシダ装飾展示
今年度導入した6種に加えて既存種数点について、流木及び展示躯体への着生、養生を行った後、常設展示温室内での展示を開始した。
着生及び養生にあたっては、日当たり、通風、潅水などに注意し、貯水葉が着生木に確実に巻き込むまで熱帯植物試験圃場にて管理を行った。特に、Platycerium ridleyiについては、過湿条件で生育不良を起こすことから、送風により過湿を防ぎ潅水頻度を適宜検討しながら管理を行った。
展示に於いては、各植物と調和した額縁を使用し、印象的な展示となるよう心掛けた。

3.今後の課題

今年度は、熱帯植物試験圃場で栽培管理を行ってきた貴重な植物を過年度よりも多く展示することができた。開花株のみを展示する一時的な展示活用だけではなく、常設展示として温室内に装飾展示を行うことは、熱帯ドリームセンター及び熱帯・亜熱帯都市緑化植物園などの利用者満足度の向上を図る上で非常に重要である。中でも、常設展示に於いては、その後の維持管理が非常に重要であり、貴重な植物を常に良好な状態で管理・展示することが望まれる。栽培温室と展示温室の育成環境が違うことから、各植物の特性及び栽培方法の調整が今後の課題である。また、展示の方法においても、利用者を飽きさせない工夫を行うために、今後も新たな展示方法を検討していく必要がある。

4.外部評価コメント

希少植物・有用植物の栽培、保全、維持管理が中心と思われるが、一般者、専門家が観賞できるように、展示の機会を多くとり、成果の確認、活動成果の蓄積・公開等に向けた努力をされたい(池田顧問:琉球大学 名誉教授)。


*1植物研究室 *2植物課

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