普及啓発の取り組み
安里成哉*1
総合研究センター琉球文化財研究室では、首里城に関する普及啓発事業の一環で、首里城講座・首里城基金講座の開催及び『首里城公園に関する調査研究・普及啓発事業年報』の発行を行った。
首里城講座は、首里城に関する歴史・文化を県民に普及啓発することを目的に首里城公園首里杜館1階情報センターで開催した。当財団の職員の他に県内の多才な講師陣を招聘し、5期14回行った。
第1期及び第2期は首里城公園開園25周年記念特別展と連携し、特別展の見所などを紹介する講座を開催した。
第1期(7月14、21、28日)
第1回 「首里城の25年 平成の復元新たなる遺宝~財団新収蔵品について~」
講師 上江洲 安亨(当財団総合研究センター)
第2回 「琉球絵画の世界」
講師 平川 信幸(沖縄県教育庁文化財課)
第3回「描かれた首里・那覇」
講師 輝 広志(当財団事業課調査展示係)
第2期(8月18、25日、9月1、8、15日)
第1回 「首里城跡・円覚寺跡の発掘調査で得られた復元整備情報」
講師 新垣 力(沖縄県立埋蔵文化財センター)
第2回 「発掘からみえる中城御殿のくらし」
講師 仲座久宜(沖縄県立埋蔵文化財センター)
第3回 「色と糸が語る琉球王国の染織文化」
講師 宮城 奈々(当財団総合研究センター)
第4回 「紅型模様の構造」
講師 平田 美奈子(沖縄県立芸術大学附属研究所共同研究員)
第5回 「琉球の漆芸文化~沖縄美ら島財団所蔵品を中心に~」
講師 仲嶺 絵里奈(当財団総合研究センター)
第3期(12月1、8、15日)
第1回 「絵師の役割~漆器・紅型図案・御後絵・事件ドキュメント~」
講師 上江洲 安亨
第2回 「御後絵とその彩色模写復元について」
講師 輝 広志
第3回 「琉球王国時代の絵師と図案~鎌倉芳太郎写真資料を通して~」
講師 仲嶺 絵里奈
第4期(平成30年2月9日、16日、23日)
第1回 紅型の技法について
講師 山田 葉子(那覇市歴史博物館)
第2回 沖縄の焼物の技術と技法
講師 倉成 多郎(那覇市歴史博物館)
第3回 琉球漆器の技法
講師 岡本 亜紀(浦添市美術館)
第5期(平成30年3月2日)
第1回 「琉球食文化の継承~”琉球料理美榮”を中心として~」
講師 久場 まゆみ(当財団総合研究センター)
首里城公園友の会会員やガイドの方々を中心に講座のリピーターも増え、事業開始から4年目を経ち講座が定着しつつある。次年度以降も首里城に関し、かつ時宜を得た多くの県民が興味を抱くテーマの講座を開催し広く普及啓発に努めたい。
首里城基金とは、国内外に散逸した首里城関係の文化遺産の収集・保存・復元を行うために、沖縄県、市町村、各種団体、また多くの方々からご協力を得て設置されている基金である。
本講座は首里城基金の普及を図るために、基金の意義や活用状況報告をした。
講座は平成29年12月22日金曜日に、首里城公園首里杜館1階情報センターで行った。講師は当財団総合研究センターの上江洲安亨が務めた。
「首里城のお宝紹介!!」というテーマで、首里城基金で収集した絵画「白澤之図」や仲宗根眞補の「月下神猫図」、染織では「絹黄色地梅楓桜雪輪手鞠文様紅型袷衣裳」、漆芸「朱漆花鳥七宝繋密陀絵沈金盆」などの収蔵品の解説を行った。
首里城基金講座は初めての試みであったが、同時期に開催している首里城講座よりも受講希望者が多く、関心の高さが伺えた。今後も定期的に講座を開催し、首里城基金の普及啓発に努め、延いては首里城公園の魅力的な管理運営に寄与する。
琉球文化財研究室では、首里城公園の展示会、収蔵品の修繕報告及び調査研究をまとめ、『首里城公園に関する調査研究・普及啓発事業年報』を刊行している。刊行した年報は、沖縄県内の公立図書館、文化財関連施設等に配布した。
尚家文書とは、那覇市歴史博物館に所蔵されている尚家(琉球国王家)に伝わっていた史料のことで、当財団では平成21年度から首里城に関する調査研究・普及啓発を目的に複製本の製作を行っている。平成27年度に尚家文書複製を一通り終え、同年に同館所有の家譜(琉球の士族の系図を記した史料)のスキャニングも行っている。
今年度は7,152(104冊)の家譜マイクロフィルムのスキャニングを行い、PDFデータとした。
尚家文書及び家譜は、琉球王国時代を知る貴重な資料だが、複製本が多く作られている訳ではなく、一般に閲覧が容易ではない。当財団で複製製作を行い、首里城に関する歴史・文化を研究・学習する方々が資料を閲覧しやすくなるよう、環境及び資料整備を実施していく。
写真-1 首里城講座の様子
写真-2 講師の上江洲安亨
*1琉球文化財研究室
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