1. 1)親子、子どもを対象にした各種教室の実施
沖縄美ら島財団総合研究所

普及啓発の取り組み

1)親子、子どもを対象にした各種教室の実施

 

伊藝元*1・木野沙央里*1

1.はじめに

当財団では、亜熱帯性動植物に関する調査研究や国営公園の管理をする中で蓄積されたノウハウ、研究成果等を社会に広く発信し、多くの方々に亜熱帯性動植物に関する学習の機会を提供する普及啓発事業として、子どもから大人までを対象にした各種教室等を実施している。平成29度は主に「美ら島自然学校」を会場に、一般市民や親子を対象にした「美ら海自然教室」、「美ら島自然教室」、「美ら島・美ら海こども工作室」等の学習会を開催した。海洋博公園等の外部施設で実施した分も併せて、以下に報告する。

2.実施結果

2.実施結果
写真-1 干潟の生き物観察会の様子

1)美ら海自然教室(4事業)

美ら海自然教室では、沖縄の自然環境の不思議や面白さを、室内実験や野外観察などの体験を通して学習した。
平成29年度は「ウミガメと砂浜」、「干潟の生き物観察会」、「サンゴ礁の磯観察」、「ゲームでたのしむ おきなわのかいそう」の4事業を開催し、43名の参加があった。
その中でも親子を対象とした「干潟の生き物観察」では、参加者から「一見何もいなさそうな干潟でも、じっくり観察しているといろんな生き物が観察でき、またそれぞれの生き物が、他の生物ともつながりを持っていることが分かった」などの感想があり、野外学習を通して沖縄の自然環境の理解を深めたことがうかがえた(写真-1)。

2)美ら島自然教室(1事業)

美ら島自然教室は、主に親子を対象とし、沖縄の植物や自然環境についての不思議や面白さを、野外観察を中心に学習した。
平成29年度は「山の生き物観察会(山の植物を観察しよう)」の1事業を開催し、18名の参加があった。この学習会では、美ら島自然学校周辺の林道に生育する植物を実際に観察しながら、形態や生態等の特徴を講師が解説した。参加者からは「林道に少し入っただけで数十種類の植物が観察でき、また危険な植物や野外で観察する時の注意等も分かったので、とても勉強になった」といった意見をいただくなど、身近な環境に興味・関心を持っていただく機会を提供できた。


3)美ら島・美ら海こども工作室(5事業)
写真-2「カーブヤーをつくろう」実施の様子

3)美ら島・美ら海こども工作室(5事業)

美ら島・美ら海こども工作室は、主に親子を対象とし、沖縄で採取できる動物や植物由来の材料、日常生活用品の廃材等を用いて、様々な玩具等の工作物を作製する事業である。工作物の作製過程で動植物や自然環境の豊かさと活用法を学び、創造性を養うことを目的としている。
平成29年度は、「海藻おしばをつくろう」、「アダンクラフト」、「変わりカーブヤー(くらげ)」、「カーブヤーをつくろう」、「サンゴの型取り染めでオリジナルTシャツなどをつくろう」の5事業を開催し、95名の参加があった。
工作室の中には行事や季節に合わせて開催する講座もあり、「カーブヤーをつくろう」は元旦に開催した。カーブヤーを作成後元旦の青空で各々の作品を揚げて正月らしさを体験した。参加者からは、「凧の材料と準備の仕方について学びたい。」という工作の内容そのものに関する意見の他、「凧揚げを通して文化について知りたいと思った。」といった工作をきっかけに他分野への興味・関心に繋がる意見も見られた。

4)美ら島自然学校における学習会(15事業)
写真-3「イノーの生き物探し」実施の様子

4)美ら島自然学校における学習会(15事業)

主に小学生以上を対象として実施した。夏休み特別イベントとして企画した「自由研究の課題みつけ」や、「ウミガメ」、「サンゴ礁のイノーの生き物観察(※イノーとは、サンゴ礁で囲まれた浅い海のことを指す沖縄の方言)」、「漂着物」、「有孔虫」「棘皮動物」「干潟の生き物」、等をテーマに開催し、206名の参加があった。
その中でも「サンゴ礁のイノーの生き物観察」を題材にした学習会では、美ら島自然学校で野外観察のコツや注意点、危険な生き物の特徴について解説した後、イノーの環境や生物について野外観察を行った。また「有孔虫」については、実際に採集し、自然学校内の教室で実体顕微鏡を用いて観察し特徴等を調べた。このように、周囲の自然環境を活用したほか、実体顕微鏡等の設備を利用する等、美ら島自然学校の強みを生かした学習会を実施できた。

この他、「サンゴ礁自然誌講座」と称し、総合研究センター視聴覚室にて、サンゴとサンゴ礁の違いやサンゴ礁の浅瀬にいる危険な生き物を学習した後、本部町備瀬海岸で観察会を行った。参加者の感想には「今まで身近であまり関心がなかった生き物たちの詳しい生態が分かった」「礁地に多くの生き物がいることに大変興味を持ちました」等参加者にとって学習効果の高い講座となったようであった(実施後アンケートより)。

5)外部施設における教室の実施

国営公園管理部企画運営チーム、植物管理チームが主担当となり、海洋博公園内にて動植物に関する教室や工作室等を実施した。本教室の実施内容の企画や講師については、研究センターの職員が務めた。
また、7月29日、30日に沖縄コンベンションセンターで開催された「夏休みこども自由研究in沖縄コンベンションセンター2017」にて、夏休みの自由研究のヒントを紹介した。主に小中学生を対象として、沖縄の動植物や首里城の歴史文化、海洋文化等に関するパネル展示解説や生態の展示解説を行った。また当日、生中継で財団の活動等の紹介を行った。

3.今後の展望

今後も、当財団職員が中心となって講師を務めるほか、外部の専門家を講師として招聘するなどし、生き物の生態観察や実験、顕微鏡を使った観察や野外観察、工作などの体験を交えた各種教室を企画・実施する。また、親子でコミュニケーションを取りながら学べる親子向けの講座や、気づきのきっかけとなるような小学生以上の子ども向け講座など、参加者のニーズに合った内容を検討し、学びの機会を提供する。


*普及開発課

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