琉球文化の調査研究
安里成哉*1・勝連晶子*1
当財団では、首里城公園の魅力、満足度向上及び県内外、国外に散逸する首里城関連資料の保存を目的に資料収集を行っている。平成29年度は陶芸・絵画・漆芸の3分野で12件の資料収集を行った。
また収集された資料の中から劣化の激しいものを優先し修繕を行った。琉球文化財研究室では平成29年度に過年度に収集した絵画資料1件の修繕を行った。
当財団では、首里城基金を活用して、首里城公園の展示にふさわしい、展示効果・学術的価値を有した資料の収集を行っている。
平成29年度も琉球王国時代の歴史及び美術工芸資料等、散逸文化財の所在情報を収集・調査した。うち、展示内容に沿うものについて収集の検討を行うため、有識者を招聘して審議いただいた。平成30年1月18日に陶芸、1月23日に絵画、2月25・28日に漆芸分野の各収集委員会を実施し、意見聴取した内容をもとに財団内で調整し、陶芸2件、絵画4件、漆芸6件、計12件の資料を収集した。
収集資料は下記の12件(22点)である。なかには、年代・銘入りの漆器もあり、首里城での展示活用に資するだけでなく、王国時代の歴史文化・技術・技術史の解明のための調査研究に役立つ資料である。
(1) 陶芸分野
(2) 絵画分野
(3) 漆芸分野
写真-1 鉄釉丁字風炉
写真-2 神猫図
写真-3 黒漆山水楼閣人物螺鈿印籠
平成29年度は絵画「孫億筆花鳥図」の修繕を行った。本資料は三幅対の2つ目の花鳥図で、絹帛に牡丹や木蓮などの花が極彩色で描かれている。
孫億は清代の中国・福建の絵師で、石嶺伝莫(琥自謙)や山口(神谷)宗季(呉師虔)ら琉球人絵師に影響を与えた人物である。
経年劣化により本紙に破れや折れ、表装に欠失が生じていため、京都府の有限会社墨仙堂に依頼し、修繕を行った。
今回の修繕で、本紙の折れを補強する「折れ伏せ紙」や欠失した箇所を補う「補修絹」が見られたことから、過去に修繕をした痕跡が確認できた。
また、花弁や葉に裏彩色が確認できたが、過年度に修繕した三幅対の1つ目と比べ絵具の残りが少なかった。そのことから、製作時に異なる裏彩色の表現を用いた可能性や、過去の修繕で失われた可能性などが考えられるが特定するには至らなかった。
平成30年度には三幅対の3つ目の修繕を行う予定となっている。三幅とも修繕を終えたら首里城公園の特別展などで展示をする。
また今後とも修繕を行いながら資料の調査を行い、技法の解明など知見を深めていく。
写真-4 本紙の破れ(修繕前)
写真-5 本紙の破れ(修繕後)
写真-6 修繕前(左)と修繕後(右)
*1琉球文化財研究室
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