琉球文化の調査研究
安里成哉*1
漆器の加飾技法「螺鈿」はヤコウガイやアワビガイなどを加工し、文様を描くものである。貝の加工方法として「煮貝(にがい)」や「摺貝(すりがい)」といった方法で貝から真珠層を取り出し、螺鈿に使用する。
その加工の様子を記録し、「煮貝」と「摺貝」のそれぞれサンプルを作成した。
製作は琉球螺鈿の宮城清氏に依頼した。
煮貝とは、貝を煮て真珠層を取り出す加工方法。
(1)貝表面の石灰質を金槌で叩いて取り除く
この工程により、真珠層が剥離しやすくなる。また煮る時間を短縮でき、煮過ぎて貝がボロボロになるのを防ぐ意味がある。
(2)貝を煮る
火を絶やさないように、4~10日間煮る。目安は貝を叩いて音で判断する。
(3)貝を金槌で叩き、加工しやすい大きさにする
(4)貝を煮る
真珠層を薄く剥離させるために1~2日煮る。
(5)真珠層を薄く剥離させる。
摺貝とは砥石などを使い、貝を徐々に薄くして螺鈿に使えるまで加工する方法。
(1)グラインダーを入れやすくするため、貝の節の石灰質を金槌で叩いて取り除く
(2)節の部分にグラインダーで貝を切り分ける
(3)切り分けた貝の表面の石灰質をグラインダーで削る
(4)砥石を使い、貝を水砥ぎする
硬く弧を描くようだった貝を、薄く平らになるまで研いでいく。今回は1片を水砥ぎした時間は1時間以上かかっていた。厚さは数十ミクロンほどになる。
写真-1 表面の石灰質を取り除く様子
写真-2 貝を煮る様子
写真-3 真珠層を1枚1枚に分ける様子
写真-4 節の部分から貝を切り分ける
写真-5 水砥ぎの様子
平成30年度に螺鈿の手板を製作し、貝の加工から作品(螺鈿漆器)の完成までを視覚的に分かる資料を作成し、首里城公園の展示に活用したいと考える。これにより管理運営している施設の満足度向上を図る。
また、加工の方法により輝き方が僅かに異なるため、作成したサンプルは螺鈿漆器の調査研究時に技法や製作年代の判断材料の1つとすることができる。
写真-7 煮貝の成果品画像
写真-8 摺貝の成果品画像
*1琉球文化財研究室
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