亜熱帯性植物の調査研究
赤井賢成*1
総合研究センターでは、平成28年度から沖縄県の絶滅危惧植物の生息域外保全と島野菜等の有用資源植物の系統保存を目的とした種子等の超低温保存を開始した。平成29年度からは環境省の種子収集・保存事業で採取された種子や胞子のうち難貯蔵性のものを対象に超低温保存の試行を実施している。本報ではこれまでに保存試行した種子等を報告すると共に、業務を展開する中で浮かび上がってきた問題と課題、今後の種子等の収集・保存計画について報告する。
導入した大型窒素保存容器(液相保存用)は、大陽日酸社製DR-245LM7(容量245L)である(図-1)。これには100個のクライオチューブが収納できるクライオボックスが64個入り、最大6,400サンプルを保存できる。液体窒素は1日に約7L蒸発するが、可搬式液体窒素容器(大陽日酸社製DLS-120B)から自動供給されレベルは維持される。機器導入時のイニシャルコストは約580万円(税込)であった。ランニングコストは液体窒素購入費と機器の維持管理費等を併せて約60,000円/月(税込)である。
機器導入後、これまでに難貯蔵性のものを中心に16種類の植物種の種子・胞子を保存試行し(表1)、高い生存率を維持した状態で保存ができている。環境省の種子収集事業との連携においては、今後、解決が必要なこととして、新宿御苑との役割分担、保存難易性の評価、費用分担、クリーニング、情報管理、所有権等の課題や問題が表面化した。財団の自主事業では、今後、絶滅危惧植物の中でも沖縄県固有種で絶滅確率が高い種類を優先に、種子等の収集・超低温保存を進めていく。
表-1 種子・胞子の試行保存を行っている16種類の植物種
*1植物研究室
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