1. 1)親子、子どもを対象にした各種教室の実施
沖縄美ら島財団総合研究所

普及啓発の取り組み

1)親子、子どもを対象にした各種教室の実施

ミラーメリア*1

1.はじめに

当財団では、亜熱帯性動植物に関する調査研究や国営公園の管理をする中で蓄積されたノウハウ、研究成果等を社会に広く発信し、多くの方々に亜熱帯性動植物に関する学習の機会を提供する普及啓発事業として、子どもから大人までを対象にした各種教室等を実施している。
平成28年度は、「美ら島自然学校」を活用し、一般市民や親子を対象にした「美ら海自然教室」、「美ら島自然教室」、「美ら島・美ら海こども工作室」等の学習会を開催した。海洋博公園等の外部施設で実施した分も併せて、以下に結果を報告する。

2.実施結果

1)美ら海自然教室(4事業)

美ら海自然教室では、沖縄の自然環境の不思議や面白さを、室内実験や野外観察などの体験を通して学習した。
平成28年度は「大人のための投網講座」、「始めてみよう!化石の研究」、「自然の面白さを伝えるために」、「魚の標本を作ろう」の4事業を開催し、82名の参加があった。
その中でも一般市民を対象とした「大人のための投網講座」では、参加者からは「自然を身近に感じることができた」、「捕獲禁止生物、危険生物等に関心を払うようになった」などの感想があり、実体賢を通して沖縄の自然環境の理解を深めたことがうかがえた。
また、「魚の標本を作ろう」では、魚の形態や生態等の特徴を学習した後、参加者自ら「魚の標本作り」に取り組んだ。参加者の感想には「標本の役割をきちんと学べた」、「標本の作り方に関心が湧き、子どもも大人も興味のもてる内容だった」等参加者にとって学習効果の高い講座となったようであった(実施後アンケートより)。

2)美ら島自然教室(6事業)

美ら島自然教室は、主に親子を対象とし、沖縄の植物や昆虫、川の生き物等の陸生生物や自然環境についての不思議や面白さを、室内実験や野外観察などの体験を通して学習した。
平成28年度は「緑のカーテンをつくろう」、「トンボやヤゴの秘密を探る」、「クモの秘密を探る」、「沖縄の山の生き物学習会」、「沖縄の川の生き物学習会」、一般市民を対象にした「大人のためのやさしい植物学講座(3回連続講座)」の6事業を開催し、120名の参加があった。
その中でも「沖縄の山の生き物学習会」は、美ら島自然学校周辺の山すそに生育する植物とその生育環境を教材として活用し、実際に植物を観察しながら形態や生態等の特徴を講師が解説した。参加者からは「沖縄に自生する植物の種類が少しずつわかるようになり、植物の分類方法をもっと学びたい」といった意見をいただくなど、身近な環境に興味・関心を持っていただく機会を提供できたようであった。

3)美ら島・美ら海こども工作室(10事業)

美ら島・美ら海こども工作室は、主に親子を対象とし、沖縄で採取できる動物や植物由来の材料、日常生活用品の廃材等を用いて、様々な玩具等の工作物を作製する事業である。工作物の作製過程で、動植物や自然環境の豊かさと活用法を学び、創造性を養うことを目的としている。
平成28年度は、「海藻おしばをつくろう」、「ジンベエザメの張り子をつくろう」、「作って揚げよう-ゆるキャラの変わりカーブヤー」、「空き容器で人形を作ろう」、「作って回そう-いろいろな風車」、「大昔の暮らしを偲ぶ-貝輪やペンダントなどをつくろう」、「クリスマスリースをつくろう」、「カーブヤーをつくろう」、「水引で正月飾りをつくろう」、「サンゴの型取り染めでオリジナルTシャツなどをつくろう」の10事業を開催し、176名の参加があった。
工作室は行事や季節に合わせて開催することとし、「クリスマスリースをつくろう」はクリスマス前の11月に開催した。参加者からは、「色々な木の実に触れ合うことができて嬉しい。今後も身近にあるものでリースを作製したい」といった意見があるなど、熱心に作製に取り組む様子が見受けられた。市販されるリースもあるが、自身でオリジナルのクリスマス飾りの作製手順を学んだことは参加者にとって貴重な体験となったようであった。

4)美ら島自然学校における学習会(26事業)

これらの学習会は主に小学生以上を対象として、夏休み特別イベントとして企画した「自由研究の課題みつけ」の他「ウミガメ」、「イノーの生き物(※イノーとは、サンゴ礁で囲まれた浅い海のことを指す沖縄の方言)」、「漂着物」、「砂」、「地層」等をテーマに開催し、305名の参加があった。
その中でも「イノーの生き物」を題材にした学習会では、美ら島自然学校で野外観察のコツや注意点、生き物の特徴について解説した後、イノーの環境や生物について野外観察を行った。その際、興味を持ったり、名前がわからない生き物等については採集し、自然学校内の実験室で水槽に入れて観察し、図鑑を使って種名や特徴等を調べた。このように、周囲の自然環境を活用したほか、水槽等の設備を利用する等、美ら島自然学校の強みを生かした学習会を実施できた。

5)外部施設における教室の実施

国営公園管理部企画運営チーム、植物管理チームが主担当となり、海洋博公園内にて動植物に関する教室や工作室等を実施した。本教室の実施内容の企画や講師については、研究センターの職員が務めた。
また、7月30日、31日に沖縄コンベンションセンターで開催された「夏休みこども自由研究in沖縄コンベンションセンター2016」にて、主に小中学生を対象として、沖縄の動植物や首里城の歴史文化、海洋文化等に関する展示解説を行い、夏休みの自由研究のヒントを紹介した。

  • 図-1 ウミガメの骨格復元の様子

    図-1 ウミガメの骨格復元の様子

  • 図-2トンボの標本つくりの様子

    図-2トンボの標本つくりの様子

  • 図-3「クリスマスリースをつくろう」実施の様子

    図-3「クリスマスリースをつくろう」実施の様子

  • 図-4「美ら島自然学校学習会 イノーの生き物探し」実施の様子

    図-4「美ら島自然学校学習会 イノーの生き物探し」実施の様子

3.今後の展望

今後も、当財団職員が中心となって講師を務め、生き物の解剖や実験、顕微鏡を使った観察や野外観察、工作などの体験を交えた各種教室を企画・実施する。そして、親子でコミュニケーションを取りながら学べる親子向けの講座や、気づきのきっかけとなるような小学生以上の子ども向けの講座など、参加者のニーズに合った講座内容を検討し、学びの機会を提供していきたい。

 

*1普及開発課

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