1. 5)各種資材を活用した植物培養土の開発(その1)~培養土作出資材の混合と発酵処理、腐熟度調査~
沖縄美ら島財団総合研究所

亜熱帯性植物の調査研究

5)各種資材を活用した植物培養土の開発(その1)~培養土作出資材の混合と発酵処理、腐熟度調査~

安里 維大*1

1.背景、実施目的

海洋博記念公園内から発生する植物性廃棄物剪定枝、刈芝等)、動物性廃棄物(餌残渣等)、を有効活用し、園内植栽地へ還元する資源循環技術を確立しゼロエミッション化の一助になる調査研究が目的である。


図-1 作業工程

1)期間(作業日程と図-1作業手順)

全調査期間:平成26年4月~平成27年3月
①素材混合:平成27年5月16日
②高速発酵処理:平成27年5月16日~5月17日
③フレコンバック発酵処理:平成27年5月17日~8月10日
④腐熟度調査(コンポテスター)、(発芽試験):平成27年6月2日、平成27年6月13日、平成27年7月17日

2.期間及び方法

1)素材の混合と発酵処理

必須材料である園内産出の魚粉、樹木枝葉チップを発酵助成材料と混合し発酵処理を行い培養土作出のための各種供試体を試作する。
(1)供試材料の混合割合
発酵助成材料 各4種類(米糠,油粕,アカリファ,山羊糞)と必須利用材料(魚粕+樹木チップ)を混合し材料を5種類試作。
必須利用材料と発酵助成材料を重量比割合9:1で混合した(表-1)。成分量・炭素率は下表(表-2)のとおり。

  • 表-1 供試素材の混合比

  • 表-2 供試材料の成分量

(2)高速土着菌発酵処理機(MaCS)
土着菌(好気性)を培養し、MaCS本体に定着(H21)させた後、供試材料を投入する。減圧されているため水の沸点が下がる。本体内部温度は60℃、減圧下で加熱するため、供試材料に含まれる空気が膨張し、空隙が生まれる。その酸素を用いて土着菌が増殖、分解、発酵が促進されるが、空間内に微生物が増え過ぎると、酸素量も少なくなり不活性化してしまう。また、撹拌されることにより、土着菌が140℃の外壁と接触し、一部が死滅する。この、「増殖」⇒「撹拌」⇒「死滅」を行い、土着菌にとって最適な環境下に条件をコントロールすることで、土着菌の増殖と分解・発酵を高速に進めることが可能となる。混合した各供試体をMaCSに投入し3時間の発酵処理を行った。処理後の含水率は処理前の1/3の20%前後

  • 写真-1 魚粗(餌残)とMaSC

  • 写真-2 フレコンバックを使った発酵処理

(3)フレコンバック発酵処理
高速発酵処理時間を短くし中熟発酵状態で取り出した後、各供試体を各々フレコンバックに移し再発酵処理を行う。理由として、供試体別{温度の経時変化で必須利用材料(魚粕+木材チップ)を分解する}のに相性の良い発酵助成材料の特性を把握するのに完熟していない方が都合が良いからである(写真-2)。
※中熟発酵状態は完熟よりも肥料の成分が残っており堆肥としては良い。発酵期間中は温度、含水率を定期的に測定し発酵サイクルに合わせた撹拌作業を実施する。温度と水分量の測定は週3回程度行い供試体別に経時変化を確認の上、タイミングを図り 給水、撹拌を実施する(図-2、図-3)。 含水比調整は各フレコンバックの中の供試体上、中、下段部分をランダムに各3回以上サンプリングし10ℓバケツ内で水分量が60%になるように調整し、各供試体毎の給水量を決定した(写真-3)。供試体別に最短の発酵期間(日数)と発酵温度レンジの出現パターンを見つけ、各素材の性質を把握することが肝要だと考える。

  • 図-2 供試体別水分量の経時変化

  • 図-3 供試体別発酵温度の経時変化

  • 写真-3 含水比調整

(4)腐熟度判定(コンポテスター、発芽試験)
①コンポテスター
原理:供試材料中の好気性微生物が易分解性有機物を分解する時に酸素を取り込み二酸化炭素を放出する。この時に供試体1gが1分間に消費する酸素量(μg/mg/g)を測定する(写真-4)。

  • 写真-4 コンポテスター

  • 図-4 コンポテスター使用手順

②易発芽試験

  • 表-3 コマツナの発芽評価

  • 写真-5 発芽試験の様子

生育阻害物質の影響を確認するために、コマツナ種子を用いて簡易発芽試験)を行った。
は供試材料に10倍量の蒸留水を加えて30分以上振盪した後に抽出(#1ADVANTEK)しシャーレーに発芽シートを敷き、コマツナの種子20粒を播種、抽出液10mlを加えた(写真-5)。
場所は植物研究室内で試験ボックス(段ボール箱)で暗条件を作りその中で行った。同時に箱内外の温度をデータローガーで測定した(図-5)。発芽評価は表-3に従った。

  • 図-5 発芽試験期間中の温度状況
    ※グラフ上の突出した部分(最大値35.9℃)は不注意で窓から直射日光を(試験ボックス)あててしまった。

  • 図-6 60度以上の積算(温度・時間)・と平均温度

試験ボックス内温度 平均28.2℃、最大35.9℃、最低25.2℃、室内の平均気温27.6℃。

3.結果

温度:図-3は各供試体の発酵温度の推移である。フレコンバッグ内(500kg程度の供試体)でも70℃以上に発酵熱が上がることが確認できた。
※フレコンバック内供試体中心点(表面より30cm深)の温度。
供試体別温度の差異を分かり易くするために、「供試体別の発酵温度60℃以上の平均温度、積算温度、積算時間」を表した(図-6)。
図-6、図-9(文末)より、
平均温度(℃):Yg>TsH、KnH>AkH、ArH。
積算時間(日):KnH、AkH>ArH>TsH>Yg。
積算温度(℃):AkH>KnH>ArH>TsH>Yg。
の順となり特にKnH、AkHが熱源としての発酵助成材として有効であると考える。

  • 図-7  AkH60℃以上の平均・積算温度・積算時間

  • 図-8  KnH60℃以上の平均・積算温度・積算時間

AkH:60℃<70℃(平均温度:63℃)、455時間(積算時間)、70℃<:(平均温度:72.3℃)、64時間(積算時間)。

KnH:60℃<70℃(平均温度:64.5℃)、631時間(積算時間)、70℃<(平均温度が71℃)48時間(積算時間)。

  • 表-4 牛糞堆肥に埋没した雑草種子の発芽率

  • 表-5  病原菌、寄生虫の耐熱性 (Golueke,1977)

  • 腐熟度:コンポテスター

    図-9供試体別酸素消費量の経時変化

  • 表-6 発芽試験評価

Arを除いて直接土壌に散布された時に易分解性有機物微生物の分解が急激に起こらなく安全と言われている酸素消費レベル「3」μg/min/g程度を示している。

総合発芽評価値「8」以下は安全でないと言われている。ArH(アカリファ)とW(水:コントロール)の2種類が7であった。
今回の発酵処理と腐熟度調査において発酵助成材としてKnH(米糠混)とAkH(油粕混)が他と比べて良い結果が出た。 しかし供試体毎の発酵温度の経時変化に特徴が出ているので今回の調査だけで単一な結論を出すのは早計である。例えばYgの71.1℃が111時間連続しているKnHの64.5℃が631時間継続していることがそれである)。じっくり熟成させる材料として、あるいは短期間に発酵を進める材料として等々使い方は色々考えられる。その側面が見えたことは重要で今後は調査対象毎に発酵助成材料の使い分けが出来ると考える(図-10)。

4.今後の展開

①今回の結果を基に供試体毎、混合比率別の組み合わせによる調査を実施する。
②植物工場対応可能な有機液肥化試験を実施する、魚粉他の成分抽出、溶出、乳酸菌、酵母菌による発酵分解等。


図-10 供試体別の発酵温度60℃以上の平均温度、積算温度、積算時間

参考資料

  • [株式会社ジャグラス]高速発酵装置マニュアル
  • 堆肥化過程における堆肥品質と堆肥腐熟度判定のための酸素消費量との関係、古谷 修、古川智子、伊藤 稔、日本土壌肥料学会誌、74巻、645-648, 2003.
  • [山口武則, 2003 誰でも簡単に堆肥の品質評価が出来る]

*1植物研究室

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