普及啓発の取り組み
前田好美*1・鈴木瑞穂*1
新報サイエンスクラブは、県内の小中学生が行う沖縄の自然や動植物に関する調査研究を対象に助成を行うものである。児童生徒の「科学の芽」を育み、環境の重要性や沖縄の自然環境への関心を高めるとともに、自然科学の研究者や環境学習・教育の指導者等、次代を担う人材の育成を目的として実施した。今年度は5回目の実施となり、昨年度に引き続き小学生20件程度、中学生10件程度を採用件数とした。
平成27年5月20日(水)から6月16日(火)にかけて募集を行った。応募総数は36件で、小学生22件、中学生14件であった。6月24日(水)に審査会を開催し、全34件(小学生22件、中学生12件)が採択された。
7月4日(土)、第1回オリエンテーションを開催し、事業の概要、助成金、スケジュール、発表会等について説明を行った。また、南九州大学の遠藤 晃教授を招き、研究の進め方等に関する講演を行った。
8月10日(月)、沖縄科学技術大学院大学(恩納村)の施設見学を開催した。本年度は、サイエンスクラブ開始から5周年の節目を迎えたことより一般の参加者も募り、記念イベントとして実施した。実施内容は、キャンパスの見学ツアーやミニ講演会であった。
8月21日(金)、美ら島研究センター視聴覚室において開催した。始めに「野外調査を行う際の注意点」と題し、永田俊輔(普及開発課)による講演を行った。その後、助成対象者は事前に記入した中間報告書を基に、分野ごとに分かれた財団職員に対して中間発表を行い、研究を行う上で困っていること等を相談した。セミナー終了後には、美ら島研究センターの施設や標本庫等を見学した(図-1,2)。
11月14日(土)、琉球大学資料館である風樹館(西原町)において研究のまとめ方セミナーおよび風樹館見学会を開催した。琉球大学資料館(風樹館)学芸員・佐々木健志氏が研究のまとめ方に関する講演を行った。講演後、施設内の見学も行った。
本事業では、単に研究費用の助成を行うだけでなく、研究を進めていく中で疑問に思ったことや悩んでいることなどを解決するため、専門家に相談することができる「フォローアップ」制度を設けている。フォローアップについては、当財団職員や各分野の専門家が対応にあたっており、今年度のフォローアップ利用は10組15件であった(表-1)。
表-1 フォローアップ対応一覧
日付 |
内容 |
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8/5(水) |
ちゅら町公園に住む昆虫たち、その種類① |
8/5(水) |
なぜソメイヨシノは沖縄に咲かないのか |
8/10(月) |
イソヒヨドリの研究 Part.2 |
8/13(木) |
有孔虫の生態の謎① |
9/9(水) |
ちゅら町公園に住む昆虫たち、その種類② |
9/10(木) |
作ろう!アミークス生物図鑑① |
9/17(木) |
作ろう!アミークス生物図鑑② |
9/20(日) |
カバマダラの蛹化の完了と羽化は朝8時頃? |
9/20(日) |
どこにいるの?~リュウキュウオオスカシバ~ |
9/22(火) |
有孔虫の生態の謎② |
10/25(日) |
カブトムシ、なぜ泣くの? |
10/25(日) |
珊瑚礁からの贈りもの ~「琉球石灰岩」 |
11/8(日) |
食虫植物の生態2 |
11/22(日) |
有孔虫の生態の謎③ |
3/6(日) |
有孔虫の生態の謎④ |
平成27年1月31日(日)、浦添市産業振興センター結の街(浦添市勢理客)にて発表会を開催した。調査研究に取り組んだ全34個人・団体が、研究成果をまとめたポスターを会場に掲示し、3グループに分かれてそれぞれ30分の持ち時間で発表を行った(図-3,4)。発表会では、研究者全員が発表者または質問者となり、活発な意見交換が行われた。ポスター発表終了後、識者からの総評として元沖縄生物教育研究会会長の安座真安史氏が総評を述べた後、全員に修了証と記念品が手渡された。
本事業の特色となっている「フォローアップ制度」の利用促進を図るため、「研究レクチャー・フォローアップ&総合研究センター見学会」を開催した。今年度は研究者が質問しやすいよう、分野ごとに相談ブースを設置し、少人数での実施を図った。参加した研究者や保護者の評価は好評で、アンケート結果からも「専門家とコミュニケーションがとれてよかった」等の感想が得られた。その後のフォローアップ利用件数も前年度に比べて増加した。
研究発表会では、採択された34件の研究者のうち、3件が私用により欠席となったが、ポスターおよび報告書の提出は完了しており、概ね計画通りに遂行された。
また、企業による社会貢献活動をたたえる「青少年体験活動表彰」(文科省主催)に応募したところ、琉球新報社が県内初受賞となる「審査委員会特別賞」を受賞した。
今後の実施にあたっては、フォローアップにあたる専門家の情報を紙面等で公表する等、新報サイエンスクラブの特色であるフォローアップ制度の利用促進につながる情報発信について検討する。
*1 普及開発課
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