海洋生物の調査研究
岡慎一郎*1・宮本 圭*1
琉球列島は魚種多様性が極めて高く、未だに分類学的に混乱しているものが多いばかりでなく、新種や日本初記録などの報告も相次いでいる。一方で、陸水域などの特殊な生息環境においても独特の生物相が形成されており、希少種なども多く含まれる。当事業では、琉球列島の魚類等の自然史研究の発展に寄与するため、以下の取り組みを実施した。
なお、これら一連の調査研究により、平成26年度は7報の学術論文が受理された。
当財団では琉球列島の魚類標本の収集・管理を通し、学術研究や普及・教育活動に役立てている。
平成27年度には後述の備瀬地先周辺の魚類調査のサンプルや、水族館等へ持ち込まれた標本約700点が新たに登録され、その中には国内初記録のものも含まれた(図-1)。特筆すべきは、平成27年1月の寒波後に海浜に打ち上げられた魚類である。ここで採集されたものうち4種以上が国内初記録である可能性が高く、現在関連機関とともに研究を続けている。
図-1 国内初記録と思われるベラ科魚類
図-1 アゴアマダイ科魚類
平成18年度より、海洋博公園内に生息する希少種であり陸棲最大の甲殻類でもあるヤシガニ(図-2)の生態モニタリング調査を実施しており、平成27年度も調査を継続した。園内の生息数は本年も概ね700匹前後と見積もられ、資源量には大きな変動はないと判断される。また、鋏脚の咬合力に関する研究も開始し、講演会などの普及啓蒙活動にも利用している。
また、本年度は名護市で希少淡水魚のドジョウ(図-3)とタウナギの高密度生息域を発見し、生息密度や遺伝的特性について調査を行った。沖縄本島では非常に貴重な生息環境と判断されるため、今後は関連機関と連携しつつ、保全策等について検討する予定である。
図-2 希少種ヤシガニ(沖縄県レッドリスト絶滅危惧II類)
図-3 希少種ドジョウ(沖縄県レッドリスト絶滅危惧IB類)
沖縄美ら海水族館目前に広がるサンゴ礁域を中心とした浅海域に生息する魚類を把握するために、潜水および採集調査による魚類相調査を実施した(図-4)。その結果、計14回の調査で250種以上の魚類が確認された。今後とも確認種数は増大すると見込まれており、次年度以降は異なる手法も取り入れた調査を展開する予定である。
任意に採水した環境水中に存在するDNAの塩基配列情報から、同環境に生息する魚類を特定する革新的技術を開発するため、千葉県立博物館等と共同研究を行っている。
平成27年度には、水族館展示水槽から得たわずかな飼育水から高精度で魚種を特定できるまでに至り、論文として公表された。さらに、この技術を天然水域にも応用すべく、備瀬周辺海域や久米島周辺海域で採水・分析を行った(図-4)。現在のところ数百種の魚種が特定できているが、濾過手法などの新規開発によってより高精度の分析が可能となる展開にある。
*1研究第一課
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