普及啓発の取り組み
岡慎一郎*1・戸田実*1
本部町はかつて「カツオ漁の町」として栄えていたものの、現在は衰退傾向にある。そこで、本部町役場、本部漁業協同組合と当財団で「本部町水産業振興協議会」を発足し、現在はカツオ漁業の制限要因となっている活餌の確保に着目した技術開発を行っている。
現在、活餌はカツオ漁前夜に漁獲したものに頼っており、高齢化が進んだ漁業者の労働的負担は大きく、活餌漁獲の省力化が求められていた。そこで、当財団ではLED水中灯を用いた集魚トラップによる漁獲手法の技術開発を行っており、平成24年度までに漁獲手法としてのトラップの有効性が確認できた。しかし、当時のトラップは潮流により形状が変わること等の問題点もあり、構造を改良する必要があった。平成25年度は網の固定方法や入口の形状を改良し、実際の活餌漁を想定した試験操業を10月に実施した(図-1)。その結果、潮流による構造の変形は生じず、小魚の入網状況も良好であり(図-2)、トラップの基本構造は概ね完成したと言える。また、LED水中灯の点灯方法についても、効果的な点灯方法を見出すことができた。今後はタイマー制御の導入による半自動化に向けた技術開発を予定している。
また、活餌確保が困難な冬季における代替餌料の開発を目的として、地元の小型定置網で大量に漁獲されるミズンを高鮮度で保つための冷凍手法、およびこれを実際の漁で試用することによって餌料としての有効性を検討した。その結果、冷凍中の乾燥を防ぐためのグレース処理(薄い氷の膜を形成させる処理:図-3)を施したものが脱水や変色の程度が小さく、高い鮮度が保たれていた。また、これを用いた試験操業により、当冷凍ミズンは一本釣りにはやや不向きであるものの(魚体が大きすぎる)、小規模船舶で操業される曳縄漁の餌としては十分利用可能と判断された。
*1研究第一課
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