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  1. 9)園内廃棄物から作製した有機肥料を活用した島野菜等の栽培に関する調査研究
沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

亜熱帯性植物の調査研究

9)園内廃棄物から作製した有機肥料を活用した島野菜等の栽培に関する調査研究

松原智子*1

1.目的

海洋博公園では、飼育動物の餌残渣として大量の魚粕が排出され、その処理が課題となっている。
魚粕は肥料成分を豊富に含むため、園内の草花等に施用することで廃棄量の削減が期待できる。
しかしながら、魚粕を肥料として施用すると土壌中で分解されるまで苗の植え付けが行えないことに加え、分解の課程で臭気が発生するため利用者の往来が多い場所に施用するのは不適当である。よって、現状では主に化成肥料を施用し、魚粕の大半は廃棄されている。
そこで、本研究では魚粕を原料として、植物工場で使用できる有機液肥および取り扱いが容易な堆肥を作製し、島野菜等の栽培に用いて効果を確認した。

2.有機肥料の作製

“写真−1
写真−1 餌残渣(魚粕)および有機液肥
1)有機液肥

令和2年3月15日に魚粕30kg、ススキ1kg、パートナー細菌2ℓ(合同会社アグアイッシュ製)および雨水35ℓを混合し、4月17日まで1日1回撹拌し続けた。これを圧搾すると20ℓの有機液肥が得られた(写真−1)。

2)堆肥

有機液肥を回収した後の残渣38kgにススキを9.5kg加えて堆積し、60℃程度に温度が上昇する度に切り返しを行った。2か月後には切り返しを行っても温度の上昇が観察されなくなったため、コマツナ発芽試験および酸素消費量の測定を行って安全に施用できることを確認した。

3.栽培試験と結果

“写真−2”
写真−2 有機液肥を使用したシマナの水耕栽培
“写真−3”
写真−3 堆肥(左)または化成肥料(右)
を施用して栽培したシマナ図中の白線は30cmを表す。

“写真−4”
写真−4 球根定植後40日目の中咲きチューリップ
左:化成肥料施用なし 右:化成肥料施用
1)有機液肥を使用した水耕栽培試験

沖縄県の伝統的な島野菜のひとつであるシマナおよび一般的なリーフレタスの一品種であるチリメンチシャについて、魚粕から作製した有機液肥を用いて水耕栽培試験を行った(写真-2)。
Ishi et al.1)を参考に、シマナおよびチリメンチシャの苗に養水分の吸収を助けるアーバスキュラー菌根菌(AMF)を接種し、0.4~0.6mS/cmに希釈した有機液肥を用いて栽培すると、化学肥料を用いた慣行の水耕栽培と同等の収量が得られた。

2)堆肥を使用した栽培試験

海洋博公園内の花壇および芝生には、1㎡あたりの窒素施用量が7.5gとなるように化成肥料を施用している。そこで、窒素施用量が1㎡あたり7.5gとなるように堆肥を施用してシマナおよびレタス類を栽培し、化成肥料を用いた場合と生育を比較した。
その結果、化成肥料を用いた場合と同等またはそれ以上の収量を得ることができた(写真-3)。

3)チューリップ栽培における施肥量削減の試み

1月下旬に熱帯ドリームセンターで実施しているチューリップの栽培展示では、窒素を594.4ppm含む培養土を使用し、さらに1㎡あたりの窒素施用量が4.0gとなるように化成肥料を施用している。しかしながら、この培養土には10gあたり16個のAMF胞子も含まれ、培養土中の肥料成分のみで問題なく生育する可能性が考えられたため、中咲き品種のチューリップを用いて栽培試験を行った。
培養土に含まれる肥料成分のみで栽培すると、化成肥料を施用した場合と比較して草丈が有意に低いものの健全に生育し、開花までの日数は有意差がないことが示された(写真-4)。

4.今後の取り組み

現状では大半を廃棄している魚粕を原料として有機液肥および堆肥を作製し、シマナおよびレタス類の栽培に用いることで慣行栽培と同等もしくはそれ以上の収量を得ることができた。
また、近年では食用作物に加えて草花等についても化学合成農薬および化成肥料に頼らない安心・安全な栽培管理が求められており、AMF等の有用な土壌微生物を活用することがその実現につながる。
今後は海洋博公園における活動(島野菜等の栽培展示や収穫体験等)にこれらの有機肥料および栽培技術を応用し、公園の魅力および利用者の満足度向上を通じて地域振興を目指すとともに、環境問題に対する財団の取り組みをPRしていく。

5.外部評価委員会コメント

水耕栽培は慣行法と同等の成果が出ているので、新規性が解る試験を追加して成果の発表に挑戦されたい。有機固形肥料の有効性が証明されたので、普及方法の検討が期待される。園内のチューリップ栽培については、継続的な栽培指導が必要であろう。(佐竹顧問:昭和薬科大学薬用植物園 研究員)。

AMFを活用し、有機液肥に魚粕を用いたレタス類やシマナの有機水耕栽培技術の事業化を期待している。餌残渣由来の有機固形肥料や海洋博公園で用いている培養土の利用においても、AMFを活用した安心・安全で持続的な作物生産技術の普及を図っていただきたい。(石井顧問:徳山高等工業専門学校 研究員)。

参考文献
1) Ishii, T., Shano, A. and Horii, S. (2016). New organic hydroponic culture using arbuscular mycorrhizal fungi and their partner bacteria, and newly developed safe plant protectants. Proc. QMOH 2015 - First Int. Symp. Qual. Mngmt. Organic Hortic. Prod. 680-690.


*1植物研究室

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