スマートフォンサイトはこちら
  1. 2)沖縄諸島の絶滅危惧植物に関する現況調査Ⅲ (伊平屋島)
沖縄美ら島財団総合研究所

亜熱帯性植物の調査研究

2)沖縄諸島の絶滅危惧植物に関する現況調査Ⅲ (伊平屋島)

阿部篤志*1・仲宗根忠樹*2・横田昌嗣*3

1. はじめに

沖縄県版レッドデータブック(「改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(菌類編・植物編)レッドデータおきなわ」沖縄県文化環境部自然保護課,2006)は、2006年の発刊以降、約10年が経過している。沖縄諸島の絶滅危惧植物においては、分布情報や生育環境等の知見に関し、現状不明の種や未調査の種があること、開発や採集等の人為的な影響、及び植生遷移や自然災害による撹乱等の自然的な影響により、絶滅または減少傾向にある植物に関する調査が不十分であることなど課題が多い。絶滅危惧種の保護保全のため、ひいてはその種が生育する自然環境や原風景の保全策を検討するのは急務であり、その基礎資料となる生息域内の現況を把握することは重要である。
2014年度から筆者らは「沖縄諸島の絶滅危惧植物に関する現況把握プロジェクト」を立ち上げ、南西諸島の中央部に位置する島嶼郡『沖縄諸島』における分布状況、生育環境、減少要因、新記録や新産地等の知見を集積し、植物多様性の保護保全、地域連携、普及活動に寄与することを目的に調査を実施している。2016、2017年度は、伊平屋島の絶滅危惧植物を対象に調査を行った。
これらの成果については、日本植物園協会第53回大会(2018年6月、広島県)で発表予定である。

2.調査方法

 本調査は、伊平屋島の絶滅危惧植物(維管束植物)を対象に、2016年5月~2017年8月に7回実施された。既存資料や有識者からのヒアリングで得た情報等を参考に各島を踏査し、環境省RDBおよび沖縄県RDBに掲載されている種が出現した場所、出現種、個体数、生育環境、減少が懸念される要因の記録、生態写真の撮影、標本採集を行った。採集した証拠標本は、(一財)沖縄美ら島財団総合研究センターの植物標本庫に納めた。

3.調査結果の概要

3.調査結果の概要及び今後の保護方策
図-1 コショウノキ(左上)、ナゴラン(右上)、エダウチヤガラ(左下)、オオマツバシバ(右下)

環境省版および沖縄県版レッドデータブックに掲載されている絶滅危惧種のオオマツバシバ、エダウチヤガラ、タカツルラン、オキナワチドリ、オキナワソケイなどを伊平屋島で初記録し、コショウノキの2箇所目の自生地を新たに記録した(図-1)。また、園芸用の採集により絶滅の危機に瀕している、ナゴランの比較的大きな集団を十数年ぶりに確認した(図-1)。併せて、上記の種を含む合計45種の生育環境や生育状況に関する知見を集積した。
今後は、これらの成果を重要地域の保護保全、地域連携活動、普及活動に役立てていきたい。


*1植物研究室・*2株式会社ツドイカンパニー・*3琉球大学

ページTOPへ