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  1. 10)底面給水コンテナの課題と対策
沖縄美ら島財団総合研究所

亜熱帯性植物の調査研究

10)底面給水コンテナの課題と対策

安里 維大*1

1.背景、実施目的

底面給水コンテナの一貫したテーマは「植物栽培の合理的管理を実現出来るグッズ」であることで、いくつもの商品が世に出ては消えて行った。見方を変えるとニーズは常に存在しているが定着にまで至っていない。考えられる原因は①満足の行くものが無かった②使いこなせなかった③情報の拡散が緩慢であった。以上3点のうち①②は調査研究によって解決可能であるとの考のもと過去を検証して現在に生かすことが一番の解決策だと考えている。

2.方法

過去の管理データの洗い出し、用水量、植物の種類と維持期間等々、不具合の洗い出しと解決方法を検証する。

  • 図-1 作業進行表

  • 表-1 使用植物の種類と時期(スマートコンテナ)

3.スマートコンテナ

1)使用植物の種類

表は実際に使用された植物の種類である。設置場所により種類に違いが見られる。国際通りはビル影、ビル風により隣り合った場所でも成長状態に差が出た。ハイビスカス:他と比べればおおむね良好ではあるが、アブラムシが付きやすい。ブーゲンビレア:風に弱く2週間程度で花が落ちてしまう。ブッソウゲ:ハイビスカスや他の植物に比べ風、日蔭、渇水に強く手間はかからないが見た目には劣る。アラマンダは夏期(5月~9月)に樹勢があり花付も良好である。
ポインセチア:冬場の屋外の風に耐えられない。
クロトン:日当たりの良い場所では手間がかからない。カイガラムシに注意が必要(3月)。
ウルマイエロー(クロトン):冬期は色が悪くなる。
トゲナシアダン、シマヤマヒハツ、フクギ、シェフレラ:風に強く冬期に向くがスマートコンテナをイメージする植物では無い。

観光リゾートのイメージの強い沖縄はハイビスカス等の花木の方がマッチしているが、現状は冬期にそのような花木を維持するのは至難の業で、1週間に2、3回程度のペースで入替えしない限り今のところ解決方法は無く費用対効果を考えるとなかなか難しいところである。

2)植物・コンテナ別給水量

図-2は植物別・コンテナ別の給水量の経時変化を示している。旧型コンテナにおいて植物別給水量では特にブッソウゲとハイビスカスを比較しやすいように記している。給水量で、ブッソウゲはハイビスカスの約半分の給水量である。ハイビスカスとブッソウゲの給水量の差は平均69ℓ/月で年間でコンテナ1基当たり約800ℓの差になる。新型コンテナ と旧型コンテナの比較では夏期で5倍、冬期で2倍の給水量に差が出る。

  • 図-2 植物別・コンテナ別・給水量の経時変化

  • 写真-1 残水量確認窓

3)課題

雨水兼用タイプの能力は高いが旧型に比べて構造が複雑になっているため、コンテナに熟知していないと問題が発生した時に素人では対応が難しい。
①給水量が分からない。エアーがかむとオーバーフローが始まり満水になった錯覚をうけ給水を止めてしまう。
対処法:残水量が見える窓を付ける(写真-1)。

②旧型では供給水穴から底面への給水であったが新型においては別にスポンジを差し込む穴が存在しそこからも底面へ水を供給するため、スポンジ が無くなったり、無くなった後からゴミが入ったり、スポンジが藻で覆われたりと管理に手間がかかっているのが現状(写真-2)。
対処法:その部分をスマートカダン同様にシンプルな穴だけの構造にする。

③水平調整をする架台とコンテナの2つに分かれている構造は見た目も安全上も問題がある。スマートカダン同様に架台とコンテナを一体型にする(写真-3)。

④雨水兼用タイプは、給水する際に網目状の場所にホースを押し当てて注水せねばならないので、ホースを突込める給水孔が有れば注水中に他のメンテナンスが出来作業効率が上がる。

  • 写真-2 水供給口(スポンジ付)の様子

  • 写真-3 架台・コンテナ一体型

  • 写真-4 雨水兼用型にも注水口が必要

4.スマートコンテナ

1)使用植物の種類

使用植物の種類で現在まで調子が良かったのはベゴニア、ケイトウ、千日紅であった。
底面給水コンテナ全般的に言えることは植物の活性が良い時期は問題はおこらない。ポット内の土は毛管水によって常に湿っている状況なので活性が落ちて水の移動が緩慢になると水、土、根が腐敗し最後に枯死してしまう。
ポット内の土の構造を解決しない内は「コンテナに合っている植物」は語れない

2)ポット内敷石量の調整

底面給水コンテナの底は常に水が存在しポット底が濡れた状態になるため過湿にならない程度の鉢底石の量を調べた。方法は鉢底からの水位をスマートカダンと同じ1cm深とし供試材料の表面が毛管水により濡れるまでの時間を測定した。イソライト、ゼオライト、ボラ石を試した。
結果はボラ石600ml(50%)で1440分、200ml(25%)で180分、12.5%で5分であった。実際にスマートカダンのポットには25%(180分)を採用した(図-3)。

  • 表-2 使用植物の種類と時期(スマートカダン)
    ※表、空欄部分はこの時点でスマートコンテナが導入されていない

  • 図-3 ポット内敷石量の調整

3)水量・温度調査


図-4 減水量調査

図-5 コンテナ内温度調査(位置:上、中、下 植物:有、無)

減水量の調査は現状に水を足して、満水になった時点の水量を満水状態(43ℓ)から減じた値。
自然条件下(アグリパーク屋外)での日減水量は約1ℓ/dayであったので、計算上は無給水で1カ月以上管理が可能である。コンテナ内の植物の有無、内部の温度を上(表面)、中、下(底面)に分け測定を行った。植物無しの表面温度が最高値51.5℃の時、植物有りでは45.5℃と6℃の温度差があった。

4)課題と対策

スマートシリーズ底面給水型コンテナが共通し利点として上げていることは少管理で効率的な運用が可能であるということであるが、今後の解決されるべき課題を以下に挙げる。コンテナは水平にセットして始めて自動給水の機能を発揮する。コンテナ内の鉢底に対し必要最小限の水(水位1cm前後)を供給するため水平が保てなくなると精妙な供給が機能しなくなり、過剰供給やその逆も起こる。
現在、スマートカダンのタンクからの水供給孔は直径5mm程度の孔が1か所のみで、時として目詰まりや表面張力の均衡が保たれ給水しないことがあり 精妙な調整が必要。
対策案として
①:四方向に孔を増やすことで目詰まりや時々発生する表面張力の均衡による供給不能状態からの回避と危険を分散する。
②:水位を2cm以上にセット出来る構造にし何等かの理由で水平状態が途中で狂った場合の状況を緩和する。ただし、水量の多い分、水腐れの危険も増すので木炭性不織布、銅板、その他方水の腐敗を遅延させる対策をとる。
③:過剰水に関しては毛管水上昇が有る限りコンテナだけでの対応に限界が有るため、ポット内の敷石(ポーラス)を気相と液相のバランスの取れた土層構造(砂耕栽培的発想)で対応する。
④:内部に入れる植物コンテナ自体をフローティングタイプにして2重に給水量の調整をする。
⑤その他、感染症の媒介虫である蚊(幼虫:ボウフラ)対策は必須。銅線やその他 植物に害のない程度の金属イオンを利用して対策する(例:本部棟前スマートカダン3基中、銅線(裸線)を入れた1基はボーフラと藻の発生も抑制されていた)。
⑥水耕栽培に適した植物作り。③と関連するが、常に水気があっても鉢底まで根を下ろさせる植物の研究。最近の例として、尺鉢でボリュウムを上げるために3本仕立てで仕上げられたハイビスカスの根系のキャパは1/3であり風を含めた環境圧に対して脆弱である。一本立ちの根系作りと同時に風に強いブッソウゲとの混血種の開発も必要である。
⑦細胞壁を強化する成分や固着剤を利用し日々の管理の中でも底面給水栽培による植物体の軟弱化への対策を行う。
⑧菌根菌を利用して植物体自身の活性能力を高める技術を獲得し応用する。
⑨発酵技術を利用した生きた有機液肥の開発を行い腐敗の起こらない底面水を実現出来る技術を獲得し応用する。

参考資料

  • 雨水供給兼用型コンナ

*1植物研究室

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