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  1. 6)有用植物の増殖に関する調査・研究
沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

亜熱帯性植物の調査研究

6)有用植物の増殖に関する調査・研究

徳原憲*1・佐藤裕之*1・比嘉和美*1・具志堅雪美*1・大城健*1

1. はじめに

沖縄県では熱帯果樹や観葉植物、島野菜等の生産が盛んであるが、その多くは株分けや挿し木等で繁殖させなければならない栄養繁殖性作物である。栄養繁殖性作物は種子繁殖性作物と異なり繁殖効率が悪く、また、ウイルス等の病気を親株から引き継ぎやすい問題がある。
植物体から組織の一部を取り出し人工環境下で培養する組織培養技術は、上記問題点を克服する技術として既に多くの作物で実用化がなされている。しかし、沖縄県で栽培されている作物の中には技術構築がなされていない品目も多い。
本調査・研究は、沖縄県の農産業振興等を目的に、県内で栽培されている有用な栄養繁殖性作物について、組織培養による増殖技術構築を試みるものである。

2.受託事業

1)パインアップルに関する調査・研究

パインアップルは沖縄県内で生産される熱帯果樹のうち生産量が最も多く、関連産業や雇用機会の創出など地域経済への貢献が大きいことから、重要な産業品目の一つとして位置づけられている。産業振興のため沖縄県農業研究センターでは継続的に育種が続けられ、‘サンドルチェ’等優れた品種が誕生している。こうした優良品種を早期に普及すべく、平成27年度より沖縄県で「熱帯果樹優良種苗普及システム構築事業」がスタートした。当財団植物研究室は優良種苗生産技術開発に関する調査を受託し、平成30年度までに増殖培養やウイルスフリー化に最適な培養条件を明らかにすると共に、増殖率や生産コストの算出、培養変異に関する調査等を行った(写真-1)。

2)パッションフルーツに関する調査・研究

沖縄県ではパッションフルーツの生産拡大が期待されており、新品種開発も進んでいる。しかし、樹勢低下などを引き起こすトケイソウ潜在ウイルスが全県的に蔓延しており、対策が急務である。ウイルス病による被害を防ぐためには、ウイルスフリー苗の作出が不可欠である。当財団植物研究室では「熱帯果樹優良種苗普及システム構築事業」の一環としてパッションフルーツのウイルスフリー化技術構築を試み、平成30年度までに生長点からの多芽体形成・増殖、生長点や多芽体からのシュート形成・伸長に関する培養条件の調査等を行った(写真-2)。

3)サツマイモの増殖業務

サツマイモは沖縄県の環境に適する農作物の一つであるが、移動規制対象病害虫であるアリモドキゾウムシとイモゾウムシの蔓延から県外への出荷が禁止されている。そうした中、久米島は両害虫の駆除に力を入れ、平成25年にはアリモドキゾウムシの根絶に成功した。アリモドキゾウムシの再発生を防ぐため、発生地域から久米島へサツマイモ種苗を持ち込む事は原則禁止となっている。一方、久米島では沖縄県農業研究センターが開発した優良品種の導入が期待されている。サツマイモの種苗は培養苗であれば久米島への導入が可能であるため、沖縄県では「沖縄県かんしょ奨励品種の節培養による苗増殖及び発送に関する業務」を実施している。
当財団植物研究室は平成29年度に引き続き本事業を受託し、優良品種3品種の培養増殖を行った。前年度の倍に当たる約1,800本のサツマイモ培養苗を生産し、久米島へ納品した(写真-3)。

  • 写真-1 パインアップルに関する調査風景
    写真-1 パインアップルに関する調査風景
  • 写真-2 パッションフルーツ生長点培養苗
    写真-2 パッションフルーツ生長点培養苗
  • 写真-3 増殖したサツマイモ培養苗
    写真-3 増殖したサツマイモ培養苗

3.自主事業

1)植物工場用無病苗の生産に関する調査・研究

地域貢献の一環として、地元の小学校の空き教室等を利用した植物工場運営に取り組んでいる。植物工場における野菜生産に当たっては、病害虫に汚染されていない苗が不可欠となる。そこで、平成29年度より植物工場用無病苗の生産に取り組んでいる。平成30年度は島野菜であるハンダマ(スイゼンジナ)と在来ネギ‘もとぶ香ネギ’を対象とした。その結果、ハンダマについては600本の培養苗の生産に成功し、植物工場施設に出荷した(写真-4)。出荷後の生育は良好で、収穫物は通常の露地栽培品と比較し葉色が良く、食味評価が高くなった。また、在来ネギ‘もとぶ香ネギ’については増殖に適する培養条件を明らかにした。平成31年度は対象品目を増やし事業の拡大を図る。

2)カンヒザクラの増殖業務

米国公益法人ハワイ桜基金ではハワイにサクラを植え、サクラの花をハワイ在住の日本人を含め多くのアメリカ人に観賞してもらうことを熱望している。代表的なサクラであるソメイヨシノは、温暖なハワイでは開花しないため、沖縄のカンヒザクラの導入を目指している。しかし、検疫上の問題でハワイにサクラを輸出するためには試験管内の植物体に限られている。そこで、生長点培養によるカンヒザクラの培養苗作成を試みた。
平成29年度は滅菌方法等の調査を行い、30株の培養苗の作成に成功した。しかし、通常の手法では発根しなかったことから、平成30年度は発根に関する技術構築を行った。その結果、発根条件が明らかとなり、培養苗の順化にも成功した(写真-5)。

  • 写真-4ハンダマ培養苗を用いた植物工場における生産風景
    写真-4ハンダマ培養苗を用いた植物工場における生産風景
  • 写真-5 発根、順化に成功したカンヒザクラ培養苗
    写真-5 発根、順化に成功したカンヒザクラ培養苗

4.外部評価委員会コメント

受託事業について、沖縄の産業発展に寄与する大切な計画。目的と方法がはっきりしていて、しっかりした研究と認められる。自主事業について、沖縄県内の生産者の要望をくみ上げ、有用植物の苗生産を組織培養で効率よく行おうとする試みであり、要望に添った十分な成果が得られていると思われる。(三位顧問:千葉大学名誉教授)


*1植物研究室

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