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  1. 7)人材育成事業
沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

普及啓発の取り組み

7)人材育成事業

伊藝 元*1・山本広美*1・鈴木瑞穂*1

1.はじめに

沖縄の将来を担う人材の育成を目的に、県内の新聞社が主催する環境教育事業に共催し、実施している。自然環境や科学に興味を持つ沖縄県内の小中学生が、視察や体験学習、研究等を通して探究心を育みながら、地域の自然について学ぶ機会の充実を図るとともに、財団職員が持つ動植物や環境に関する知識や経験を活かした学習機会の提供を行う。また、大学等で学ぶ学生や教員を対象とした次世代の指導者育成にも寄与すべく事前調査及び実施計画を行う。

2.事業内容

1)沖縄こども環境調査隊

沖縄こども環境調査隊は、沖縄の将来を担う子どもたちが環境問題の現場を訪ね、実際に見て、聞いて、感じ学んだことを、新聞を中心としたマスメディアでの紹介やシンポジウム開催等により、情報発信する学習ツアーである。沖縄タイムス社が主催し、当財団は共催として事業を行っており、今年度で10回目の実施となった。

(1)募集および応募状況
2018年4月16日(月)から5月14日(月)にかけて公募を行い、総応募者数は33名であった。作文審査にて21名を選考した後、面接審査により小学生5名、中学生3名の計8名を調査隊隊員として選抜し、6月24日の認証式後に活動を開始した。

(2)事前学習
ア)親子学習会
7月8日(日)、「親子学習会」を沖縄美ら島財団総合研究センター本部棟視聴覚室において開催した。隊員及びその家族25名が参加し、午前は阿部篤志氏(沖縄美ら島財団総合研究センター植物研究室)が講師を務め、「奇跡の島、沖縄・ヤンバルの森-多種多様な植物たち」と題し、植物の液浸標本やランの実物、調査時に使用する道具や森や山に立ち入る際の注意点など講演を行った。午後は前田好美氏(沖縄美ら島財団総合研究センター普及開発課)が「沖縄のウミガメと海の環境について」講演を行い、ウミガメの生態や観察時の注意点などについて解説した。講演後は標本のまわりに集まり、講演内容への質問があがるなど、興味関心の高さがみられた。親子学習会終了後、海洋博公園内の熱帯ドリームセンターで「奄美・やんばる・西表の貴重な植物展」を見学し、視察を予定している奄美大島とやんばるの植物や生育環境についての事前学習を行った。

(3)現地視察(奄美大島および沖縄本島)
7月24日(火)から7月27日(金)の日程で、奄美大島(鹿児島県)、7月31日(火)から8月4日(土)の日程で沖縄本島北部のやんばるの現地視察を行った(写真-1、2)。
現地で調査や保護活動、自然案内を行っている方々の協力を得て、奄美大島・やんばるの自然環境及び動植物の特徴、保全活動等について視察した。視察日程は表-1の通り。
現地調査には、当財団から奄美大島視察に鈴木瑞穂(普及開発課)、沖縄本島やんばる地域視察に山本広美(普及開発課)がそれぞれ同行し、隊員の健康及び安全面の管理、視察中の学習補助などを行った。また、昨年度に引き続き奄美こども環境調査隊も合同で現地視察を行った。

表-1 奄美大島・やんばる視察日程

日付 内容
7/24(火) 奄美大島到着
奄美こども調査隊と合流
奄美博物館見学及びアマミノクロウサギの生態について講話
アマミノクロウサギ観察会
夜間ミーティング
7/25(水) フォレストポリス周辺散策及び植物観察会
奄美の自然環境について講話
アメリカハマグルマ駆除活動
ニュースポーツ体験
奄美少年自然の家、入所オリエンテーション
夜間ミーティング
7/26(木) 猫との関り方について講話
動物病院見学
リュウキュウアユ観察会
カヌー体験
星空観察
夜間ミーティング
7/27(金) 退所式・出発式
奄美と西郷隆盛の関係について講話
那覇空港到着
7/31(火) 奄美隊沖縄入り
8/1(水) 沖縄奄美隊再開
野外活動(トレッキング)昼の部
やんばる野生生物保護センター見学
野外活動(トレッキング)夜の部
夜間ミーティング
8/2(金) 猪垣観察
ゆりあげ貝講話・貝の観察
ビーチのゴミ拾いとマイクロプラスチックについて講話
ウミガメ産卵観察
8/3(土) ヤンバルクイナ飼育・繁殖施設見学
「やんばるを仕事にする」講話
最終まとめと全体ミーティング
解散
8/4(日) 奄美隊沖縄出発
解散
  • 写真-1 リュウキュウアユ観察会の様子
    写真-1 リュウキュウアユ観察会の様子
  • 写真-2 野外活動(トレッキング)の様子
    写真-2 野外活動(トレッキング)の様子
  • 写真-3 シンポジウムで環境宣言を行う
    写真-3 シンポジウムで環境宣言を行う

(4)企業視察
本事業に賛同、協賛をいただいた企業の環境保全活動への取り組みについて企業視察を行った。視察先は、沖縄セルラー電話(那覇市)、沖縄海邦銀行本店(那覇市)、沖縄コカ・コーラボトリング本社工場(浦添市)、環境ソリューション(沖縄市)であった。

(5)シンポジウム
2018年9月1日(土)、タイムスホール(那覇市)において沖縄こども環境調査隊2018シンポジウム 「地球の声を伝えよう~自然を守る取り組み~」が開催された(写真-3)。シンポジウムでは事前学習をはじめ現地視察、企業訪問などを通して、調査隊員が経験し、学び感じ取ったことをまとめ、報告した。当日の来場者数は、隊員の家族や関係者を含めて約100名であった。
シンポジウム終了後には、過去の調査隊員や協賛企業関係者も参加する懇親会を開催し、意見交換等を行った。

(6)まとめ
開催10回目となった今年度は、「自然を守る取り組み」をテーマに沖縄本島北部の「やんばる」と鹿児島県の「奄美大島」の視察を行った。隊員たちは国立公園の役割や奄美大島・やんばるが抱える環境問題、人や外来生物が自然に与える影響などを知り、環境を守るためには環境について考え、できることから行動していくことが大切であると話した。

2)新報サイエンスクラブ

新報サイエンスクラブは、県内の小中学生が行う沖縄の自然や動植物に関する調査研究を対象に助成を行うものである。児童生徒の「科学の芽」を育み、環境の重要性や沖縄の自然環境への関心を高め、次代を担う人材の育成を目的として実施した。琉球新報社が主催し、当財団は共催として事業を行っており、今年度は8回目の実施となった。

(1)募集および応募状況
平成30年4月13日(金)から6月1日(金)にかけて募集を行った。応募総数は49件(小学生43件、中学生6件)で、6月14日(木)に行われた審査会により、全34件(小学生29件、中学生5件)が採択された。

(2)事前講演会
5月26日(日)、自然や動植物の不思議さや実験を通した科学の楽しさを伝えることを目的に総合研究センター職員(動物研究室・植物研究室)が講演を行った。動物研究室 冨田武照:研究って楽しい!サメ研究のうらばなし。植物研究室 鈴木愛子:植物の不思議を知ろう~動けない花の戦略~

(3)オリエンテーション、見学会、中間報告会
ア)オリエンテーション
6月24日(日)、オリエンテーションを開催し、事業の概要、スケジュール等について説明を行った。また、野中正法(総合研究センター統括)から、野外観察の注意点に関する講演を行った。
イ)沖縄科学技術大学院大学(OIST)見学会
7月26日(木)、沖縄科学技術大学院大学(恩納村)の施設見学を開催した。
ウ)研究レクチャー・フォローアップセミナー&総合研究センター見学会
8月5日(日)、当財団総合研究センターにおいて開催した。助成対象者は、事前に記入した中間報告書を基に財団職員に対して中間報告を行い、研究を進める上で困っていること等を相談した(写真-4)。セミナー終了後には、総合研究センターの施設や標本庫等を見学した(写真-5)。

  • 写真-4 フォローアップセミナー
    写真-4 フォローアップセミナー
  • 写真-5 総合研究センター施設見学
    写真-5 総合研究センター施設見学

エ)フォローアップin那覇
10月10日(水)琉球新報本社 2階ギャラリーにおいてフォローアップin 那覇を開催した。総合研究センターや美ら島自然学校に行くのが困難な南部・離島の助成対象者に対し財団職員の出張フォローアップ対応と器材利用提供を行った。

オ)研究のまとめ方セミナーおよび風樹館見学会
10月28日(日)、琉球大学資料館(風樹館)(西原町)において研究のまとめ方セミナーおよび見学会を開催した。佐々木健志氏(琉球大学資料館(風樹館)学芸員)が研究のまとめ方に関する講義を行った後、施設内の見学を行った。

(4)フォローアップ制度
本事業では、単に研究費用の助成を行うだけでなく、研究を進めていく中で疑問に思ったことや悩んでいることなどを解決するため、専門家に相談することができる「フォローアップ制度」を設けている。フォローアップについては、当財団職員や各分野の専門家が対応にあたっており、今年度の利用件数は11組17件であった(表-2)。

表-2 フォローアップ対応一覧

日付 内容
7/19(木) ミズカマキリのひみつ-ミズカマキリとカマキリのちがいは?-
8/16(水) サメの楯鱗と歯の関係
8/20(水) 沖縄のヘビについてリュウキュウアオヘビ・アマミタカチホヘビ・アカマタ編 その1
8/23(木) 中城公園にはなぜトンボが多いのか ~その秘密を探る~
8/ ミズカマキリのひみつ-ミズカマキリとカマキリのちがいは?
9/22(土) ミズカマキリのひみつ-ミズカマキリとカマキリのちがいは?
10/10(日) 同じ椿科なのに、お茶の木と椿の木では何が違うのかな?
10/10(日) 同じ椿科なのに、お茶の木と椿の木では何が違うのかな?
10/28(日) 同じ椿科なのに、お茶の木と椿の木では何が違うのかな?
10/28(日) イワサキクサゼミの生息地について
10/28(日) チブガーラの水の汚れはどこから?
10/28(日) どこにいるの?リュウキュウオオスカシバ~フォーシーズン~
11/15(木) イワサキクサゼミの生息地について
11/9(金) ペーパースラッジにおける植物の生長過程の研究
11/24(土) 私の家の前を流れている川ってどんな川?~宇地泊川(比屋良川)の水質調査~part2
12/26(水) 有孔虫の観察 有孔虫の生態、不思議を調べる
1/30(水) 有孔虫の観察 有孔虫の生態、不思議を調べる

(5)研究発表会
平成31年1月26日(土)、琉球新報本社2階ギャラリー及び3階ホールにて発表会を開催した。調査研究に取り組んだ全34個人・団体が、研究成果をまとめたポスターを会場に掲示し、それぞれ40分の持ち時間で発表を行った(写真-6、7)。発表会では、研究者全員が発表者及び質問者となり、活発な意見交換が行われた。ポスター発表終了後、総評として当財団総合研究センター統括の野中正法が総評を述べた後、全員に修了証と記念品が手渡された。

  • 写真-6 研究発表会
    写真-6 研究発表会
  • 写真-7 研究成果を発表する研究者
    写真-7 研究成果を発表する研究者

(6)まとめ
今年度は例年フォローアップセミナー開催時に行っていた「野外活動の注意点について」の講演をオリエンテーションで行い、研究前の安全管理について保護者を含めた助成研究者へ周知を行った。また、フォローアップの時間を長めに設けることで、研究の相談や不安解消に努めた。
研究発表会では、採択された34件の研究者のうち3組が学校行事等により欠席したが、ポスターおよび報告書の提出は完了しており、概ね計画通りに遂行された。研究発表終了後は昨年度に引き続き、特別協賛であるNTT西日本のNTT武蔵野研究所見学ツアーへの参加者選出抽選会により中学生2名が選出され、後日見学ツアーを行った。

3.外部評価委員会コメント

事業の趣旨が十分に伝わったかどうかにやや不安が残る。もう少しかみ砕いた説明と、何を期待しているのかが、対象者に伝わるような丁寧さが必要(輿水顧問:(公財)都市緑化機構 理事長)。


*1普及開発課

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