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ホーム総合研究センター平成25年度 事業年報 > 1)沖縄における緑化樹木の剪定に関する調査(最終)

沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

亜熱帯性植物の調査研究

1)沖縄における緑化樹木の剪定に関する調査(最終)

阿部篤志*1・與儀実史*1

1.はじめに

緑化樹木は、快適でうるおいのある都市や沿道の環境をつくる上で、欠かすことの出来ない構成要素の一つである。しかし、沖縄における現状の街路樹等の緑化樹木は、必ずしも美しく、機能的に整備・管理されているとは言い難く、樹木の特性に合わせて美しく保つ管理技術は発展途上にあり課題が多いと考えられる。このため、沖縄の緑化樹木とその管理について、施工管理者だけでなく自治体や県民にもわかりやすく伝えていくことが重要である。


このような背景を踏まえ、本調査は平成22年度から25年度にかけて樹木の剪定に関する既存知見の整理、道路・公園樹木等の現況調査を行い、問題点や課題を整理した後、剪定試験を実施して樹種特性の把握を行い、花緑豊かな景観形成に有効な剪定技術を開発し、沖縄における緑化樹木の剪定マニュアルの作成を目指して実施した。

2.調査内容

沖縄における良好な緑景観の形成を推進することを目的として、緑化樹木の剪定マニュアルを作成するために図‐1のとおり、調査を実施した。

図-1 剪定マニュアルの作成手順

1)剪定管理の頻度や体制(ヒアリング調査)

現状の街路樹整備や管理、剪定技術について、国、件、自治体等にヒアリングを行った。

2)剪定追跡調査

数年前から剪定経過を追跡している事例、1年以内に剪定を行っている事例など、15種26本を追跡対象木とし、樹形計測(樹高、枝張り)および定点からの写真撮影を行った。なお、樹高については樹高計による計測、枝張りについては道路鉛直方向・垂直方法の直径の計測を行った。

3)モデル剪定調査

図-2 モデル樹の剪定及び調査の様子
図-2 モデル樹の剪定及び調査の様子

沖縄の街路樹における代表的な樹種の剪定に関する特性を把握するため、11種18本について、剪定パターン(剪定頻度および時期)を変え、出芽・萌芽、樹冠形成などの状況の違いを確認した。剪定は台風前に強剪定を行った(図-2)。


4)緑化樹木剪定マニュアルの作成

1)~3)までの結果より沖縄の特異性に配慮したマニュアル案を作成し、実務担当者等へのヒアリングにより内容を吟味し、公園樹、街路樹、庭園樹に共通する緑化樹木剪定マニュアルの作成を目標として実施した。

3.結果

1)剪定管理の頻度や体制(ヒアリング調査)

現状の剪定頻度では植物の生長の早さに追いつかずに、落葉や台風対策、看板や信号への視界確保などの苦情に対して強剪定される傾向にあること、近年では管理コストが低減される傾向にあり、樹種ごとの街路樹の目標樹形設定や切り返し剪定などによる管理は一般には行われていないことがわかった。

2)剪定追跡調査

①強剪定を行っても1年以内で元の状態に戻る生長が早い樹種(ガジュマル、アカギ、オキナワキョウチクトウ等)、②1年〜2年ほどで元の状態に戻るやや生長が早い樹種(ホルトノキ等)、③2年以上でも元の状態に戻らない生長が遅い樹種(デイゴ、キワタノキ等)の3タイプに分かれた(表-1)。大型台風の影響により多くの樹種については落葉、葉の潮焼け、萎れ、枝折れなど被害を受けたが、コバテイシ、オオバアカテツ、コバノナンヨウスギは一部に枝折れがあった程度で被害は少なかった。

表‐1 追跡調査結果と樹形の回復の早さの傾向
表‐1 追跡調査結果と樹形の回復の早さの傾向

3)モデル剪定調査

調査結果をもとにモデル剪定樹種について、剪定後の萌芽後の伸長量、萌芽枝本数、萌芽の範囲などを考慮し、モデル剪定木は大きく以下の4つに区分された(表-2、図-3)。尚、その他の調査対象樹種については、類似する樹種(タイプ)に該当させたが、オオバナソシンカ、オオハマボウ、デイゴ、キワタノキ、コバノナンヨウスギなどは、類似するタイプがないと考えられるため、検討が必要である。

表-2 剪定後の枝葉の生長状況によるタイプ区分
表-2 剪定後の枝葉の生長状況によるタイプ区分

図‐3 剪定後の萌芽枝本数・萌芽枝伸長量・萌芽範囲によるタイプ区分
図‐3 剪定後の萌芽枝本数・萌芽枝伸長量・萌芽範囲によるタイプ区分


4)緑化樹木剪定マニュアルの作成

本マニュアルでは、本土の緑化樹木や街路樹、庭園樹木などの剪定手法を基本しにしてつくられてきた樹木の剪定マニュアルを土台にしつつ、亜熱帯並びに台風常襲地という、樹種も環境も本土と異なる沖縄県独自の、公園樹、街路樹、庭園樹に共通するマニュアル作成を目標として作成したものである(図-4、図-5)。

使用者の対象は、沖縄県の緑化樹木、街路樹、庭木の剪定に関与する現場管理者はもとより、公園管理や街路樹管理にかかわる責任者、観光関係者、個人までの幅広い層を想定している。

図v4 剪定マニュアル(技術編)
図-4 剪定マニュアル(技術編)

図-5 剪定マニュアル(技術編)
図-5 剪定マニュアル(技術編)

4.今後の課題

今回作成したマニュアルの印刷、頒布、講習会や実習等を通して、公園等の設計・管理を行う発注者、受注者、そして一般へ普及していく必要がある。また、今後さらに剪定技術は、進展していく事が予想され、枝葉の伸長、開花における季節変化と、それらをコントロールするための知見等を反映させていく必要がある。

5.おわりに

今回作成したマニュアルは、基礎編、技術編の2部構成としており、学生から一般の方々まで読んで、見て楽しく学べる内容を目指している。また、樹木管理に携わる専門の方々が現場で活用できるよう緑化樹木の生長特性、基本技術、目標樹形の考え方、街路樹の剪定の要点等の重要なポイントが整理され、現場の実態に即した剪定方法がわかりやすく解説された内容としている。

本マニュアルが多くの方々に活用され、緑化樹木が健全に育つことは緑と花の溢れた景観形成のみならず沖縄の環境保全、生物多様性の向上にも寄与するものと期待している。

参考文献
1)平成22年度から25年度までの調査報告書


*1研究第二課

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