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沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

海洋生物の調査研究

4)魚類相に関する調査

岡慎一郎*1・戸田実*1・宮本圭*1

1.はじめに

琉球列島は国内に生息する魚種の2/3に相当する約2800種の魚類が生息しており、本邦屈指の魚種多様性を呈している。しかし、数多の研究者の手に余るほどの多様性が障壁となり、未だ解明されていない事実は多い。当事業では、これまで未調査の海域や、不明点の多い分類群において各種調査を行い、学術振興や普及啓発のための情報に資することを目的とする。

なお、これら一連の調査研究により、平成25年度は4報の学術論文が受理された。

2.石垣島サメ調査

図-1 調査状況(水揚げされたイタチザメの計測)図-1 調査状況(水揚げされたイタチザメの計測)
図-1 調査状況(水揚げされたイタチザメの計測)

毎年、石垣島では漁業被害の低減のためのサメ駆除事業が行われている。平成25年7月に行われた当事業に参加し、捕獲されたサメを同定するとともに、サイズ、重量、胃内容物、捕獲場所等を記録した(図-1)。本年の駆除事業では、2日間で5種88個体のサメが捕獲され、その大半をイタチザメとツマジロが占めた。また、サメ類の繁殖および胎児の個体発生に関する研究に供するため、生殖組織や胎児などの標本を取得した。

3.硫黄鳥島周辺での魚類相調査

当財団では、これまで魚類相に関する調査が行われていなかった硫黄鳥島周辺海域(北緯27°50′、東経128°10′付近)の魚類相調査を平成24年度から実施している。平成25年度は、5月に採集調査(カゴ・釣り・刺網)、および遠隔操作無人潜水艇(ROV)を用いた水中映像撮影による魚類相調査を実施した(図-2,3)。その結果、採集調査では45種、ROV調査では39種の魚類が確認され、未調査海域の魚類相に関する貴重な情報を取得した。沖縄島周辺海域に比べて多くの魚類が大型で、それらが容易かつ高頻度で捕獲できた印象が強く、調査海域の自然度の高さが窺えた。

  • 図-2 硫黄鳥島での採集状況(釣り)図-2 硫黄鳥島での採集状況(釣り)
    図-2 硫黄鳥島での採集状況(釣り)
  • 図-3 遠隔操作無人潜水艇(ROV)
    図-3 遠隔操作無人潜水艇(ROV)
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4.仔稚魚調査

図-3 小型曳網による仔稚魚の採集状況図-1 調査状況(水揚げされたイタチザメの計測)
図-3 小型曳網による仔稚魚の採集状況

海岸の汀線域や海草藻場などのごく浅い水域には、多くの仔稚魚が成育場として利用すると言われているが、南西諸島における実態は明らかでない。そこで、浅海域を利用する仔稚魚相やその季節的変動の把握により、成育場としての特性を明らかにすることを目的として、本部町備瀬および名護市嘉陽の砂浜海岸の汀線域と海草藻場において、月1回以上の頻度で小型曳網(図-3)を用いた仔稚魚の採集を行っている(現在も継続中)。また、当調査により得られた仔稚魚には帰属する種が不明のものが多く含まれており、これらについてはDNA解析による種同定に基づいた比較形態学的な検討も加えている。

5.標本の収集・保管・活用

図-4 稀種シラヌイハタ
図-4 稀種シラヌイハタ

図-5 ホホジロザメ
図-5 ホホジロザメ

当財団では琉球列島周辺海域から採集された生物を標本として保管しており、その管理、運用も行っている。標本は当財団の独自調査をはじめ、地元漁師や市民からの寄贈などによって収集し、学術目的の調査研究はもとより、普及啓発ツールとして各種教室等にも活用している。これらの標本は外部の研究者や教育機関にも利用していただいており、平成25年度には11件の標本貸出依頼、18件の外部研究者の来訪に対応した。

平成25年度には新たに308点の魚類標本が登録され、このうち特筆すべきものとしては、国内数例目の記録となる稀種シラヌイハタ(図-4)や、危険ザメとして知られるホホジロザメ(図-5)等がある。これらは琉球列島の魚類相を把握する上で貴重な資料となる。


*1研究第一課

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