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ホーム総合研究センター平成25年度 事業年報 > 3)ウミガメ類に関する調査研究

沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

海洋生物の調査研究

3)ウミガメ類に関する調査研究

河津勲*1

1.はじめに

沖縄島の砂浜では、アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイが産卵する。これらが産卵する砂浜は護岸工事等により減少し、そのため、産卵回数も減少している。さらに、乱獲や混獲によりその数も減少傾向にある。したがって、ウミガメ類の個体群の状態を把握することはウミガメ類の保全に有益な情報となる。本事業では、沖縄島での産卵や漂着状況を把握するとともに、標識放流を通して回遊経路の調査を行ってきた。本稿では平成25年度に行った上記調査の概要を報告する。

2.産卵・孵化後調査

図-1 アカウミガメの産卵痕跡(本部町ナカジョウ浜)
図-1 アカウミガメの産卵痕跡(本部町ナカジョウ浜)

現在、本調査は、日本全国で市民団体が中心となり行われ、その情報は特定非営利活動法人日本ウミガメ協議会で取りまとめられている。沖縄島においても同様に、当財団は調査ボランティアの方々と連携し産卵調査や孵化後調査(孵化状況の確認)を実施している。当財団が担当する調査浜は本部町の砂浜14カ所、今帰仁村14カ所、名護市13カ所、東村7箇所、恩納村2カ所、宜野座村2カ所、うるま市15カ所、計67か所で、平成25年4~9月に行った。期間中、1週間に1回程度の頻度で砂浜を歩きながら産卵痕跡を探し(図-1)、肢跡や卵の大きさから種同定を行った。

図-2 アオウミガメの孵化後の卵殻(本部町新里)
図-2 アオウミガメの孵化後の卵殻(本部町新里)

産卵はアカウミガメ、アオウミガメの2種が確認され、総上陸数は314回(アカウミガメ250回、アオウミガメ64回)、総産卵数は182回(アカウミガメ139回、アオウミガメ43回)であった。特にアオウミガメの増加は顕著で昨年度の10倍の産卵が確認され、過去最多となった。アカウミガメの産卵回数においても同様に増加し、昨年度の2倍以上であった。

ウミガメ類は産卵後約2ヵ月程度で孵化する。産卵調査を実施した産卵巣のうち、特に本部町の砂浜において、アカウミガメ37巣、アオウミガメ18巣を対象に孵化率(孵化個体数/産卵数×100)を算出した(図-2)。その結果、アカウミガメは77.2±18.8%(平均値±標準偏差、幅:6.8-98.1%)、アオウミガメは77.3±13.1%(幅:28.4-96.9%)であった。これらの孵化率は昨年度とほぼ同等の値を示した。

沖縄島での産卵状況を把握することは、ウミガメ類の個体群動向を把握する上で、極めて重要である。今後も引き続き産卵・孵化状況の把握に努める。

3.漂着調査

図-3 網に絡まり漂着したアカウミガメ(名護市久志)
図-3 網に絡まり漂着したアカウミガメ(名護市久志)

図-4 漂着したヒメウミガメの幼体(名護市屋我地島)
図-4 漂着したヒメウミガメの幼体(名護市屋我地島)

沖縄島沿岸では衰弱したウミガメ類や死体が漂着する。しかしながら、その実態や漂着要因についてはよくわかっていない。当財団では、沖縄県内一般や琉球大学ウミガメサークル「ちゅらがーみー」の協力を得ながら、漂着するウミガメ類の実態把握に努めてきた。

調査は、平成25年4月~平成26年3月に、県内一般からの情報提供を元に実施した。生存していた場合には緊急保護した。

死亡漂着は、アカウミガメ5例、アオウミガメ43例、タイマイ3例、計51例であり、アオウミガメが最も多く全体の約80%を占めた(図-3)。

また、緊急保護例はアカウミガメ2例、アオウミガメ2例、タイマイ3例、ヒメウミガメ1例であった。アカウミガメ2例については直甲長5㎝未満の孵化幼体、ヒメウミガメ(図-4)については直甲長13.5㎝の幼体であり、国内最小記録となった。さらに、本個体の消化管からはビニル片等の人工物が確認された。今後も漂着の実態を把握するため、引き続き本調査を実施する。

4.回遊調査

図-5 ヒメウミガメの消化管から確認された人工物
図-5ヒメウミガメの消化管から確認された人工物

図-6 アルゴス衛星追跡装置を装着したウミガメ
図-6 アルゴス衛星追跡装置を装着したウミガメ

ウミガメ類では、孵化後数年は、幼体の生息域や移動経路は全く分かっていない。当財団では、特に約1年間飼育した幼体に標識を取付け、沖縄島からの放流を行い、幼体の回遊経路の解明を行ってきた。装着する標識には、固有の番号と特定非営利活動法人日本ウミガメ協議会の連絡先が記入されており、再捕獲があった場合は当協議会経由で放流者に知らされることとなっている。さらに、今年度は標識放流に加え、アルゴス衛星を利用した追跡調査を実施した。この調査は、ウミガメに送信機を装着し、それから出される電波をアルゴス衛星が受信すると位置情報を得られる仕組みである。本調査では平成26年3月に飼育1年未満のアカウミガメ3個体とアオウミガメ7個体に送信機を装着し放流した(図-6)。

今年度の放流個体数は、アカウミガメ51個体、アオウミガメ108個体、タイマイ1個体であった。今年度は当財団が放流した個体の再捕例はなかった。今後も引き続き標識放流調査を行うとともに、アルゴス衛星追跡による位置情報を獲得することで、幼体の回遊経路に関する情報を収集することとする。


*1研究第一課

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