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ホーム総合研究センター平成25年度 事業年報 > 1)ザトウクジラに関する調査

沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

海洋生物の調査研究

1)ザトウクジラに関する調査

岡部晴菜*1・河津 勲*1

1.はじめに

ザトウクジラは夏季に摂餌のためロシアやアラスカなどの高緯度海域へ、冬季に繁殖のため沖縄、小笠原、ハワイなどの低緯度海域へと季節回遊を行う。本種は1960年代初頭まで商業捕鯨の対象とされており、沖縄を含む世界各地で生息数が激減したため、1966年に全大洋において捕獲が禁止された。しかしながら、1980年代には沖縄島周辺で目撃されはじめ、1990年代には本種を対象としたホエールウォッチングツアーが開催されるようになり、現在では冬季の沖縄観光産業の一つとして挙げられるほどである。さらに、近年では沖縄島周辺だけでなく、奄美大島や沖永良部島などでの目撃情報も増えつつある。

当財団では、本種の来遊量や繁殖生態を明らかにするため、1990年より個体識別を主とした非致死的調査を継続しており、現在では、東京海洋大学の加藤秀弘博士と共同で、様々な解析に着手している。ここでは、平成25年度に行った調査概要について報告する。

2.方法

目視調査は、2014年1~3月に慶良間諸島周辺海域(以後、慶良間海域)と本部半島周辺海域(以後、本部海域)で実施した(図-1)。3~5tの小型漁船から目視でザトウクジラを探索し、発見時に尾びれの写真撮影を行った(図-2)。

ザトウクジラの尾びれ腹面には各個体で色彩、模様、後縁の形状が異なるため、尾びれ写真による個体識別が可能である(図-3)。これに基づき、過去に撮影された写真(約1200頭)と比較することで個体識別を行った。なお、ここでは2012年までの識別結果を示した。

また、沖縄と他海域間の回遊を調査するため、奄美大島、沖永良部島、北海道(釧路沖)で撮影された尾びれ写真を収集し、沖縄での写真と照合した。

  • 図-1 調査海域
    図-1 調査海域
  • 図-2 調査風景
    図-2 調査風景
  • 写真-1 「海の危険生物」実施時の様子
    図-3 尾びれ腹面写真(個体毎で模様等が異なる)
    図-3 尾びれ腹面写真(個体毎で模様等が異なる)

3.結果

1)目視調査

2014年1~3月に本部海域及び慶良間海域で実施した目視調査にて得られた個体識別写真の述べ頭数は、慶良間海域が約240頭、本部海域が約280頭であった。現在、取得した写真の識別作業を進めている。

2)尾びれ写真の照合

2012年の再識別個体(過去に沖縄で確認された個体)は約300頭、新規識別個体(初めて確認された個体)は約120頭であり、昨年度とおおよそ同様の結果となった。

3)他海域との照合

他海域から提供頂いた尾びれ写真は、奄美大島で28頭分、沖永良部島7頭分、北海道(釧路沖)1頭分であった。そのうち、奄美23頭および沖永良部6頭が沖縄の個体と一致した。これは奄美、沖永良部、沖縄を含む南西諸島の個体が同一個体群であることを示すための重要な情報となる。また、北海道の個体については沖縄のものと一致しなかった。今後も他海域の写真の収集および沖縄との照合に努める。

4)来遊量解析

2011年までに個体識別された約1,200頭の発見履歴をもとに、標識再捕法による来遊量推定を行った結果、来遊頭数は2010年時点で約700頭と算出された(鈴木,2014)。1990年から2010年までの年間増加率は16.6%となり、増加傾向にあることが示された。また、来遊個体数の将来予測値は2030年で約1500頭と算出され、今後もさらに個体数の増加が続くと予想された(鈴木,2014)。適切な資源管理を行っていくためには、さらなるデータの補完と継続したモニタリングを行う必要がある。今後も引き続き、本調査を実施する所存である。

写真提供者
【奄美大島】興克樹氏、才秀樹氏(奄美クジラ・イルカ協会)【沖永良部島】前利潔氏(知名町中央公民館)、上原航知氏(GTダイバーズ)【北海道】斎野重夫氏(フリーエコツアーガイド)

参考文献
鈴木信行. 2014. 沖縄海域におけるザトウクジラ個体群動態分析. 東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科修士学位論文. 40pp


*1研究第一課

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