スマートフォンサイトはこちら

ホーム総合研究センター平成29年度 事業年報 > 7)人材育成事業

沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

普及啓発の取り組み

7)人材育成事業

伊藝 元*1・鈴木瑞穂*1

1.はじめに

沖縄の将来を担う人材の育成を目的に、県内の新聞社が主催する環境教育事業に共催し、実施している。自然環境や科学に興味を持つ沖縄県内の小中学生が、視察や体験学習、研究等を通して探究心を育みながら、地域の自然について学ぶ機会の充実を図るとともに、財団職員が持つ動植物や環境に関する知識や経験を活かした学習機会の提供を行う。また、大学等で学ぶ学生や教員を対象とした次世代の指導者育成にも寄与すべく事前調査及び実施計画を行う。

2.事業内容

1)沖縄こども環境調査隊

沖縄こども環境調査隊は、沖縄の将来を担う子どもたちが環境問題の現場を訪ね、実際に見て、聞いて、感じ学んだことを、新聞を中心としたマスメディアでの紹介やシンポジウム開催等により、情報発信する学習ツアーである。沖縄タイムス社が主催し、当財団は共催として事業を行っており、今年度で9回目の実施となった。

(1)募集および応募状況
平成29年5月12日(金)から6月19日(月)にかけて公募を行い、総応募者数は32名であった。作文審査にて21名を選考した後、面接審査により小学生4名、中学生4名の計8名を調査隊隊員として選抜し、7月8日の認証式後に活動を開始した。

(2)事前学習
ア)親子学習会
7月16日(日)、「親子学習会」を名護青少年の家(名護市)において開催した。隊員及びその家族22名が参加し、午前は安座間安史氏(元辺土名高校校長)が講師を務め、「奇跡の島、沖縄・ヤンバルの自然環境の特性」と題し、沖縄島全般の気候や地質、地形について解説を行った。午後は蝶を指標として自然観察を行う「バタフライウォッチングゲーム」を実施し、やんばるの自然を観察した。親子学習会終了後、今年度初めての試みとして沖縄タイムス社の記者が記者研修「新聞のしくみ」を行い、見出しの書き方や聞き取りの注意点等を解説した。
イ)隊員研修
7月21日(金)、東村立 山と水の生活博物館を見学し、やんばるの自然や動植物について学んだ。その後、東村ふれあいヒルギ公園を訪れ、マングローブの役割について解説を聞くとともに、カヌーに乗って慶佐次川を上りながら、周辺に生息する動植物を観察した。

(3)慶良間諸島視察
7月25日(火)から7月28日(金)の日程で、慶良間諸島(沖縄県)の現地視察を行った。現地で調査や保護活動、自然案内を行っている方々の協力を得て、慶良間諸島の自然環境及び動植物の特徴、保全活動等について視察した。視察日程は表-1の通り。
現地調査には、当財団から鈴木瑞穂(普及開発課)が同行し、隊員の健康及び安全面の管理、視察中の学習補助などを行った。また、今年度は奄美こども環境調査隊も合同で現地視察を行った。


  • 表-1 慶良間諸島視察日程


  • 写真-1 ウミガメ産卵調査見学の様子


  • 写真-2 サンゴ礁の生物観察の様子


  • 写真-3 シンポジウムで環境宣言を行う

(4)企業視察
本事業に賛同、協賛をいただいた企業における企業視察を行った。視察先は沖縄海邦銀行本店(那覇市)、環境ソリューション(沖縄市)、沖縄コカ・コーラボトリング本社工場(浦添市)、沖縄県自動車整備振興会(浦添市)で、企業の環境保全活動への取組みについて見学した。

5)シンポジウム
平成29年9月2日(土)、タイムスホール(那覇市)において沖縄こども環境調査隊2017シンポジウム 「地球の声を伝えよう~人と自然の関り  ~」が開催された(写真-3)。シンポジウムでは事前学習をはじめ現地視察、企業訪問などを通して、調査隊員が経験し、学び感じ取ったことをまとめ、報告した。当日の来場者数は、隊員の家族や関係者を含めて約105名であった。
シンポジウム終了後には、過去の調査隊員や協賛企業関係者も参加する懇親会を開催し、意見交換等を行った。

(6)まとめ
開催9回目となった今年度は、「人と自然のかかわり」をテーマに視察を行った。隊員たちは国立公園の役割や慶良間諸島が抱える環境問題、人が自然に与える影響などを知り、環境を守るためには環境について考え、できることから行動していくことが大切であると話した。
また、今年度は奄美こども環境調査隊と合同で現地視察を行ったことで、慶良間諸島に加え、奄美と沖縄の比較もしながら議論を行った。隊員OB・OGからは、当事業での経験がその後の活動や進路決定に影響を与えたといった発言があり、人材育成事業としての成果が伺えた。

2)新報サイエンスクラブ

新報サイエンスクラブは、県内の小中学生が行う沖縄の自然や動植物に関する調査研究を対象に助成を行うものである。児童生徒の「科学の芽」を育み、環境の重要性や沖縄の自然環境への関心を高め、次代を担う人材の育成を目的として実施した。琉球新報社が主催し、当財団は共催として事業を行っており、今年度は7回目の実施となった。

(1)募集および応募状況
平成29年4月20日(水)から6月3日(金)にかけて募集を行った。応募総数は50件(小学生47件、中学生3件)で、6月15日(木)に行われた審査会により、全34件(小学生31件、中学生3件)が採択された。

(2)事前講演会
5月21日(日)、自然や動植物の不思議さや実験を通した科学の楽しさを伝えることを目的に『サイエンスクラブ講演会「科学って楽しい!」』を実施した。講師として、嶺井聖太氏(アポロサイエンス)と鹿谷麻夕氏(しかたに自然案内)を招聘した。

(3)オリエンテーション、見学会、中間報告会
ア)オリエンテーション
6月25日(日)、オリエンテーションを開催し、事業の概要、スケジュール等について説明を行った。また、鹿谷法一氏(しかたに自然案内)を招き、研究の進め方等に関する講演を行った。
イ)沖縄科学技術大学院大学(OIST)見学会
7月26日(水)、沖縄科学技術大学院大学(恩納村)の施設見学を開催した。
ウ)研究レクチャー・フォローアップセミナー&総合研究センター見学会
8月6日(日)、当財団総合研究センターにおいて開催した。助成対象者は、事前に記入した中間報告書を基に財団職員に対して中間報告を行い、研究を進める上で困っていること等を相談した(写真-4)。セミナー終了後には、総合研究センターの施設や標本庫等を見学した(写真-5)。
エ)研究のまとめ方セミナーおよび風樹館見学会
11月11日(土)、琉球大学資料館(風樹館)(西原町)において研究のまとめ方セミナーおよび見学会を開催した。佐々木健志氏(琉球大学資料館(風樹館)学芸員)が研究のまとめ方に関する講義を行った後、施設内の見学を行った。

(4)フォローアップ制度
本事業では、単に研究費用の助成を行うだけでなく、研究を進めていく中で疑問に思ったことや悩んでいることなどを解決するため、専門家に相談することができる「フォローアップ制度」を設けている。フォローアップについては、当財団職員や各分野の専門家が対応にあたっており、今年度の利用件数は13組17件であった(表-2)。

(5)研究発表会
平成30年1月27日(土)、沖縄コンベンションセンター会議棟A(宜野湾市)にて発表会を開催した。調査研究に取り組んだ全34個人・団体が、研究成果をまとめたポスターを会場に掲示し、それぞれ40分の持ち時間で発表を行った(写真-6,7)。発表会では、研究者全員が発表者及び質問者となり、活発な意見交換が行われた。ポスター発表終了後、総評として当財団総合研究センター統括の野中正法が総評を述べた後、全員に修了証と記念品が手渡された。

(6)まとめ
今年度はフォローアップセミナー開催時に助成研究者同士の自己紹介及びお互いの研究について意見交換する場を設けたところ、助成研究者同士が交流を深め、お互いの研究について意見交換する姿がみられた。本事業の特色となっている「フォローアップ制度」の利用は年々定着しつつあり、今後も助成研究者が相談しやすい環境づくりに留意して事業を進める。
研究発表会では、採択された34件の研究者のうち3組が欠席したが、ポスターおよび報告書の提出は完了しており、概ね計画通りに遂行された。欠席した助成研究者の理由は家の都合、インフルエンザ罹患、学校行事等であった。研究発表終了後は、特別協賛であるNTT西日本のNTT武蔵野 
研究所見学ツアーへの参加者選出抽選会により中学生2名が選出され、後日見学ツアーを行った。


  • 写真-4 フォローアップセミナー


  • 写真-5 総合研究センター施設見学


  • 写真-6 研究発表会


  • 写真-7 研究成果を発表する研究者


  • 表-2 フォローアップ対応一覧

3)指導者育成事業

大学等で学ぶ学生や教員を対象に、次世代の指導者を育成することを目的とする。今年度は事業実施に向け、聞き取り調査及び事業内容の検討を行った。

(1)他機関の施設見学、聞き取り調査
指導者育成事業内容を検討するにあたり、国内類似施設の見学および指導者育成事業に関する聞き取り調査を行った。その結果、教員を対象とした事業を行う際は、学校のカリキュラムの理解、教育委員会との連携が求められるとの意見が聞かれた。教員に対する研修では、スタッフが考えた児童・生徒向けのプログラムを教員が受講し、意見交換を行う形式をとっている施設が多かった。また、対象科目や学習題材に関する要望だけではなく、授業に取り入れる上での疑問や不安要素についても教員と議論する必要があるとのことであった。
一般向けの事業については、毎回決まった時間に規定の人数を確保することが難しい、解説内容のレベルが保てない等の理由により、ボランティアという形式を持続するには多くの問題があった。一般市民が興味を持っている内容に対してグループを作り、活動内容は参加者の自主性を重んじて学芸員は活動の助言に留めるといった活動の成功例があった。

(2)大学生への施設及び教材の提供
大学生がゼミやサークル活動等で研修を実施するにあたり、当財団が管理する美ら島自然学校での受け入れおよび学習の支援等を行うことで、次世代の指導者育成を図ることを目的として実施した。今年度は大学生のサークル活動(新入生への研修)に対し、美ら島自然学校の施設利用受入れ及び標本等の貸し出しを試験的に行った。

(3)指導者育成事業の検討
施設見学及び聞き取り調査等の結果を基に、自然環境や動植物に関する職業に従事する一般の方に向けた講習会の実施や大学生の活動支援の実施を検討する。また、教員や一般市民の需要を引き続き調査し、事業内容の検討及び調整を進めていく。


*1普及開発課

ページTOPへ