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ホーム総合研究センター平成29年度 事業年報 > 6)調査受託業務について

沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

琉球文化の調査研究

6)調査受託業務について

安里成哉*1

1.はじめに

琉球文化財研究室では、沖縄県立博物館・美術館、伊是名村教育委員会、西原町教育委員会より文化財の修理・復元、科学分析、復元設計業務を3件受託した。

2.沖縄県立博物館・美術館:「琉球王国文化遺産集積・再興事業製作委託業務」

1)業務内容

本業務は沖縄県立博物館・美術館より、当財団と株式会社国建の共同企業体で業務を受託した。
本業務は、近代化や戦争などによって失った琉球王国時代から継承されてきた有形・無形の文化遺産に関わる学術的知見や科学分析等の情報集積をするとともに、これら文化遺産の8つの手わざ(絵画・木彫・石彫・漆芸・陶芸・染織・金工・三線)を現代の最高水準の手わざで復元を行い、王国文化の発信によりブランディングを確立に沖縄県の文化観光資源に資することを目的としている。平成29年は8分野55件の復元製作を行った。

2)復元製作概要

(1)絵画
「孔子及び四聖像」「四季翎毛花卉図巻」「四季翎毛花卉図巻工程見本」の3件製作を行った。

(2)木彫
「円覚寺仁王像」「漆巴紋牡丹沈金透彫足付盆」の2件の製作を行った。

(3)石彫
「玉陵石獅子(西室・東室)」「玉陵碑」の3件製作を行った。

(4)漆芸
「朱漆巴紋沈金大御供飯」「黒漆雲龍螺鈿東道盆」の2件の製作を行った。「黒漆雲龍螺鈿東道盆」は当財団所蔵の「黒漆雲龍螺鈿長方形東道盆」が参考作例の1つとされている(写真-1)

(5)染織
「芭蕉桃色地経緯絽織衣裳」「木綿紺格子に緯浮花織衣裳(裏)木綿黄色地紅型」など26件の試作・本製作を行った。

(6)陶芸
「擬宝珠型丁字風炉」「面取網代文三彩抱瓶」など7件の試作製作を行った。

(7)金工
「三御飾(美御前御揃)御酒器 錫製流台」「御玉貫」など5件の製作を行った。「御玉貫」は王国時代に祭事などに酒器として用いられた道具で錫瓶にガラス製のビーズ玉を苧麻糸で編み込み瓶を覆っている。こちらも当財団所蔵の「御玉貫」が参考作例となっている(写真-2)

(8)三線
「江戸与那」「盛嶋開鐘」など7件の製作を行った。


  • 写真-1 当財団所蔵の「黒漆雲龍螺鈿長方形東道盆」


  • 写真-2 当財団所蔵の「御玉貫」

3.伊是名村教育委員会:「銘苅家・名嘉家旧蔵品修復復元業務」

1)業務内容

本業務で、琉球国王の出身地である伊是名村に所在する伝承文化財の調査を行い、文化財の状態を確認し保存修復を行う。現在も祭祀儀礼等で使用されている資料は複製製作を行い、伝統的な祭祀儀礼の実施に支障の無いようにしながら、原資料は適切に保管することを目的とする。保存措置を行った文化財に関しては、資料館での展示公開・島外での伊是名村及び地域の文化財の紹介等の取組みに活用して、現在に伝来する伊是名村の琉球王国時代の特異な文化財をPRして観光振興に寄与することも目的とする。
平成29年は漆芸・古文書・金工・陶芸・染織の5分野で修復、複製製作を行った。

2)修復・複製製作概要

(1)漆芸
3件18点の修復件1点の復元を行った。修復は現状保存修理を原則として行った。修復及び復元は琉球漆工藝舎の土井氏に依頼した。

(2)古文書
6件16丁5枚の修復を行った。本紙の欠失虫害欠損箇所に同質の紙で補修を施すなどの修復を行った。また繊維組成試験も修復に併せて行った。修復は石川堂の當間氏に依頼し、繊維組成試験は高知県立紙産業技術センターに依頼した。

(3)金工
2件10点の複製製作を行った。製作にあたり原資料の代替として催事に使用されることを考慮して、色味は原資料の製作当初と想定される色ではなく、現在の色味に併せた。複製製作は金細工まつの上原氏と京都府の株式会社京都科学に依頼した。

(4)陶芸
5件7点の試作製作を行った。製作は沖縄陶磁器研究会の山田氏に依頼した。

(5)染織
2件2点の複製製作を行った。生地製作はU工房の上間氏と京都府の株式会社のむらに依頼し、縫製については県内でも琉装・和装の仕立に詳しい松本氏に依頼した。

3.西原町教育委員会:「復元模造品製作業務」

1)業務内容

本業務は西原町教育委員会より、当財団と株式会社国建の共同企業体で業務を受託した。
西原町にゆかりのある金丸(のちの尚円王)に関連する玉御冠、「致和」扁額、王衣裳について、調査・検討することを目的とし、今年度は事前調査や製作体制など実施設計を行った。

2)実施設計概要

(1)玉御冠
玉御冠(皮弁冠)は琉球国王の王冠で、かつては明朝より頒賜されていたが、後に琉球国内で製作するようになった。明朝より頒賜された玉御冠は1472(正化8)年に冊封された尚円王のものを含め、沖縄県内では1点も現存していない。
本事業では中国山東省の山東博物館所蔵の「九縫皮弁」、及び那覇市歴史博物館所蔵「玉冠(附簪)」、琉球国王を参考資料とし、および尚円王の玉御冠がいかなる仕様だったのか検討した。

(2)王衣裳
王衣裳(皮弁服)は、琉球国王が冊封の式典をはじめとする諸儀礼において着用した中国の官服である。沖縄県内に皮弁服は現存しておらず、明代の皮弁服の貴重な残存例である「明官服類(文禄五年豊臣秀吉受贈)」(宗教法人妙法院所有)が類似参考資料となる。
本事業では「明官服類」に冠する先行研究に依拠し、文献資料の内容をまとめた。「明官服類」と尚円王の衣裳との重要な共通点は、「郡王」クラスの衣裳という点である。中国の官服は支給対象者の身分により仕様が細かく定められていたため、「明官服類」を調査・分析することで、尚円王の衣裳の仕様が明らかになると考えられる。

(3)「致和」扁額
沖縄県立博物館・美術館が所蔵する「致和」扁額は尚円王の邸宅跡といわれる内間御殿に掲げられていた扁額である。原資料は現存するものの経年による劣化と戦中の損壊によって、往時の姿は失われている。
「致和」扁額の仕様を検討する材料として、「致和」扁額の原資料及び鹿児島県内に残る王族やそれに近い身分の者が揮毫した扁額を調査した。


*1琉球文化研究室

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