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ホーム総合研究センター平成29年度 事業年報 > 10)底面給水型コンテナでの菌根菌とそのパートナー細菌を用いた有機水耕栽培について

沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

亜熱帯性植物の調査研究

10)底面給水型コンテナでの菌根菌とそのパートナー細菌を用いた有機水耕栽培について

松原智子*1

1. 目的

安心・安全かつ持続可能な水耕栽培技術の例として、作物にアーバスキュラー菌根菌(AMF)を接種し、マメ科植物を原料とする有機液肥を養液として用いる石井ら〔1〕の水耕栽培技術が挙げられる。有機水耕栽培を底面給水型コンテナでも行うことができれば循環式等の従来型水耕栽培と比べて省力・省コストを実現し、なおかつ野菜の食味も向上する〔2〕。
そこで、本研究では諸外国への普及を目的に、底面給水型コンテナでのAMFを用いた有機水耕栽培技術を確立する。

2.材料および方法

液肥の調製および栽培管理は全てなごアグリパーク(沖縄県名護市字名護4607-1)の無加温ハウス内で行った。

1)供試有機養液

市販されている有機液肥「ネイチャーエイド(株式会社サカタのタネ製)」にAMFのパートナー細菌(Bacillus属、Paenibacillus属およびPseudomonas属、以下PB)を加えて腐熟させた有機液肥を供試した。以下に詳細を示す。

(1)腐熟有機液肥(Fermented organic fertilizer、以下FOF)
PBを加えて発酵させたネイチャーエイドを水道水で希釈し、5日間静置したもの。pH=6.2、電気伝導度(EC)=0.7 mS/cm。

(2)対照区(慣行栽培)
化学液肥OATハウス1号、2号および5号(OATアグリオ株式会社製)を水道水に溶解してpH=7.3、EC=1.0 mS/cmに調整し、用いた。
なお、液肥の調製に用いた水道水には塩分が含まれ0.6 mS/cmのEC値を有するため、EC計(株式会社アタゴ製 DEC-2)が示す値から0.6を引いた値を各液肥のEC値とした。

2)供試作物

ネオコール(東洋電化工業株式会社製)をφ6 cmポットに詰め、表-1に示す供試作物の播種を行った。

3)栽培試験

1月19日にエンダイブ、ハダイコン、コマツナおよびシュンギクを底面給水型コンテナ「eファーム(最大液量3 ℓ)」に定植した。試験区は有機栽培区および対照区とし、有機栽培区の作物には1株あたりGlomus clarum胞子20個相当のAMF資材(合同会社アグアイッシュ製)を接種し、栽培試験を開始した。
2月3日に各作物の有機栽培区の生育量を目視で対照区と比較し、A(対照区よりも生育が非常に良い)、B(対照区よりも生育が良い)、C(対照区とほぼ同等)、D(対照区よりも悪い)、E(生育が非常に悪いまたは枯死)の5段階で評価を行った。
有機栽培区にはECを 2.0 mS/cmに調整したFOFを2月5日に追肥し、生育量が対照区を上回るかをさらに観察した。3月7日に収穫し、全生体重および根生体重を測定した。

4)ミネラル含有量分析

エンダイブ、コマツナおよびハダイコンの地上部について、一般財団法人食品分析開発センターSUNATECにNa、K、Ca、Mg、P、Fe、Zn、CuおよびMnの含有量測定を依頼した。

3.結果および考察

1) 栽培試験

2月3日時点において、エンダイブは対照区と比べて生育が旺盛であり、B評価となった。一方、アブラナ科のコマツナおよびハダイコンにおいても対照区とほぼ同等の生育量を得られた。しかしながらシュンギクはD評価であり、肥料要求性が高い可能性が示唆された。
2月5日に有機栽培区にEC2.0 mS/cmのFOFを追肥して栽培を継続し、3月7日に全生体重を測定した結果、有機栽培区のエンダイブは対照区と比較して生育が極めて良好であった。他の3種類の野菜では両区間の有意差は認められなかったが、有機栽培区のハダイコンおよびコマツナでは対照区よりも全生体重が増加する傾向がみられた。また、対照区と比較して個体間の生育量のばらつきが少なかった(表-2)。

2)ミネラル含有量分析

3種類全ての野菜においてKおよびPは有機栽培区の方が対照区よりも含有量が多く、AMFの共生によって吸収が促進されていることが示唆されたが、逆にCa、FeおよびMnは対照区のほうが多かった(表-3~5)。
興味深いことに、キク科に属するエンダイブのMg含有量は対照区の方が多いが、アブラナ科に属するコマツナおよびハダイコンでは有機栽培区のほうが多かった。これはキク科よりもアブラナ科のほうがMg要求性が高いことを示している。

3)まとめ

ネイチャーエイドにPBを加えて発酵させた有機液肥を用い、苗にAMFを接種することで、底面給水型有機水耕栽培においても慣行栽培と同等もしくはそれ以上の収量を得ることが可能となった。
この技術の国内外への普及を図るにあたっては、さらに幅広い品目の生産が課題となる。ゆえに、現在は微量要素の要求性が異なるさまざまな作物の栽培に適した有機液肥の作出を進めている。


  • 表-1 供試作物の一覧


  • 表-2 各作物の生体重(3月7日収穫)


  • 表-3 エンダイブのミネラル含有量


  • 表-4 コマツナのミネラル含有量


  • 表-5 ハダイコンのミネラル含有量


参考文献
1) T. Ishii, A. Shano and S. Horii (2016) New organic hydroponic culture using arbuscular mycorrhizal fungi and their partner bacteria, and newly developed safe plant protectants. Proc. QMOH 2015 - First Int. Symp. Qual. Mngmt. Organic Hortic. Prod. 680-690.
2) 株式会社プラネット 豊橋植物工場事業計画書
http://www.green-wind.net/app/download/12613722088/shokubutsukojo-shoukai.pdf?t=1481535919


*1植物研究室

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