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沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

琉球文化の調査研究

琉球の歴史文化に関する事業について

上江洲安亨*1

1.はじめに

平成27年度に発足の研究第三課は、他の2課とともに平成28年度に組織改変・改称し、琉球文化財研究室となった。首里城に関する資料収集、調査研究、技術開発及び普及啓発を行うとともに、首里城公園管理部が維持管理を行う首里城公園の利用促進につながる活動を推進する。また、琉球・沖縄地域の海洋文化に関する調査研究活動を行った。平成28年度は第III期中期事業計画の2年目として調査研究事業では漆塗装関連調査で、琉球沈金の復元調査を行った。国宝尚家文書等複製本製作では、那覇市歴史博物館が所蔵する家譜のデジタル化を行った。また清代中琉関係档案選編等の刊行助成では、台湾故宮博物院に所蔵されている琉球関係資料を刊行し、琉球大学国際沖縄研究所と共同で記者発表を行った。他にも財団所蔵資料の書跡修繕を実施し材質分析、首里城基金を活用した収蔵品収集調査の実施、地域の海洋文化や農耕儀礼の内容に関する事例調査を行った。新たに琉球料理のレシピ・料理手順等を記録保存する調査を行い、報告書を作成した。外部から受託事業として沖縄県立博物館・美術館発注の琉球王国文化遺産集積・再興事業を引き続き受注し、あらたに伊是名村から銘苅家・名嘉家旧蔵品修復復元業務を受注した。首里城公園の維持管理業務のサポートとして企画展等の広報・発信業務に関する応援等を行った。普及啓発事業として首里城講座を実施した。地域貢献として大学や地域団体が主催する講座への講師派遣を行い、首里城の歴史文化を普及啓発した。このような様々な活動に関する記録・紹介を行うため年報を刊行した。

2.実施体制

図-1 琉球文化財研究室体制図
図-1 琉球文化財研究室体制図

琉球文化財研究室の体制は正職員3名であった。6月に沖縄県立博物館・美術館の琉球王国文化遺産集積・再興事業製作委託業務のため、フルタイム専門職2名(そのうち1名は事業課調査展示係兼務)を採用し、体制を強化した。

3.実施内容

1)漆塗装検討業務

古琉球期(1609年以前)の琉球沈金復元のための比較資料として、近現代で使用された彫刻刀(ゼンマイ刀)を使った沈金技法によって、鳳凰図案等の手板を製作した。

2)清代中琉関係档案選編刊行助成

台湾故宮博物院・琉球大学と連携して台湾故宮に眠る琉球関係档案の史料集刊行事業実施の調整を継続して行った。今年度は、『清代琉球史料彙編しんだいりゅうきゅうしりょういへん』を出版した。台湾の国立故宮博物院に所蔵されている清朝時代の外国関係の档案(公文書)の公開出版は初めてのことである。

3)国宝尚家文書複製本製作事業

那覇市歴史博物館に所蔵の琉球王国時代の士族の証明であった家譜をスキャニングし、デジタル化(CD-ROM)を行い、調査研究に活用するための業務を実施した。デジタル化することによって記事・内容の検索が簡易になり、首里城関係の調査研究のための基礎史料の整備を行った。

4)収蔵品修繕事業

財団所蔵絵画資料のうち、尚家資料に残る中国人絵師、孫億の「花鳥図」の修繕を行った。解体修理の結果、絹本の資料に裏彩色を施していることが分かった。

5)資料収集事業

首里城基金を活用した琉球文化財収集事業では、有識者を招集した評価委員会を実施し、琉球関係漆器4件・陶器2件・染織2件・石彫1件の収集に成功した。特に石彫は玉陵の石勾欄羽目の部分が収集できた。これは沖縄県立博物館・美術館の琉球王国文化遺産集積・再興事業製作委託業務で復元製作を行っている資料の一部でもあるため、今後の作業において、琉球王国時代の技術の調査研究及び継承に役立つ資料である。

6)舟漕儀礼等に関する調査

琉球王国時代の海洋文化・農耕文化等の調査研究を行い、海洋博公園・首里城公園での祭祀再現催事の実施や将来の映像資料のストックに役立てるため各地域の祭祀儀礼の事例調査を行った。今年度は、舟漕儀礼として糸満市名城、南城市玉城奥武島のハーリーの事例調査を行った。農耕儀礼として久米島の6月ウマチー(旧暦)の事例調査を行った。

7)琉球継承料理の研究

琉球王国時代の王族・士族階級が食した料理等の情報継承のため、「琉球料理 美栄」で提供しているすべて料理(25種)の概要、材料等について料理手順を映像や画像で記録保存し、報告書を取りまとめた。

8)年報の発行

調査研究の成果、収蔵品修繕の内容や修繕時にしか行えない化学調査結果を公開するために年報の発行を行い、県内公立図書館・大学図書館等の公共機関へ配付した。

9)普及啓発事業

  • 首里城講座
    首里城講座を4期(主に6・8・12・2月)14回実施し、373名が受講した。
  • 首里城公園企画展等の広報・発信事業のサポート
    首里城公園維持管理業務の中で実施される有料区域での企画展や首里城公園の広報業務等のサポートを行った。
  • 地域貢献
    地域貢献として県内大学や地域団体が主催する講座への講師派遣・地域新聞への記事執筆を行い首里城の歴史文化を普及啓発した。

10)受託研究

沖縄県立博物館・美術館が公募を行った琉球王国文化遺産集積・再興事業に㈱国建と企業共同体を組み応募して受注した。8分野の工芸部門(絵画・木彫・石彫・漆芸・陶芸・染織・金工・三線)で50件以上の復元製作委託業務を行った。また伊是名村が発注の銘苅家・名嘉家旧蔵品修復復元業務を受注した。古文書や漆器の修繕、陶器、金工品の調査を行った。これらの受託業務は、これまでの財団の文化財復元研究のノウハウを活かし効率的に業務を実施することができた。また、県博や伊是名村の受託業務の成果から将来、首里城公園の展示に資する復元製作研究の実施も期待される。

4.今後の課題

図-2 琉球文化財研究室の事業と今後の展開
図-2 琉球文化財研究室の事業と今後の展開

琉球文化財研究室における調査研究事業は、図-2の実線で示した各事業を行っている。事業全体を公園機能の向上、文化環境の保全・継承、首里・沖縄地域の文化・産業振興、財団の発展の4つの方向性から見ると、これまでの首里城公園の運営面から派生した復元研究の実績により、公園機能の向上に軸足を置きながらも、全ての分野に広がった事業内容となっていることがわかる。
今後とも、首里城及び琉球王国の歴史文化に関する調査研究をさらに深化させながら、地域の自治体や事業や地域振興に貢献する活動を行っていきたい。
平成27年度に実施設計委託業務を受けた沖縄県立博物館・美術館発注の琉球王国文化遺産集積・再興事業が、平成28年度は「琉球王国文化遺産集積・再興事業製作委託業務」となり製作業務を実施した。また伊是名村からも類似業務を受注し、これまでの当財団の復元製作のノウハウが首里城公園の維持管理だけでなく、文化・産業振興の発展に大きく寄与するものと思われる。
また、琉球継承料理に関する調査研究は、料亭「美榮」に残されたレシピや料理手順を記録保存する調査を地道に行った。今後とも引き続き記録保存に関する作業を行いながら、琉球王国時代の文献史料に残された宮廷料理のメニューや調理方法の解明に注力していきたいと考える。


*1琉球文化研究室

 

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