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沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

海洋生物の調査研究

5)海洋博公園地先の造礁サンゴモニタリング

山本広美*1

1.調査の背景と目的

造礁サンゴが作り出す複雑な地形と、そこに生息する多種多様な生物群で構成される生態系が「サンゴ礁生態系」である。生態系を支えるサンゴ群集は、成長や回復には長い期間を要するため、攪乱の予兆や初期の異変を確実にとらえるモニタリングが必要とされる。
近年、沖縄近海のサンゴ群集は高水温による白化やオニヒトデによる食害、台風や開発行為による破壊にさらされ、荒廃が進んでいる。日本でサンゴ礁の長期モニタリングが行われているのは西表島と海洋博公園前だけであり、地先にひろがるサンゴ群集は貴重である。
本調査は造礁サンゴ類の現況と変化を把握し、将来の保全管理に資するデータと情報を取得することを目的としている。対象となる海域は、1988年(昭和63年)に設定された範囲に、備瀬崎北側の礁池および礁縁を加えたエリア(図-1)である。

図-1
図-1

2.モニタリング調査

表-1 備瀬西水深10mのサンゴ被度の変化(%)
表-1 備瀬西水深10mのサンゴ被度の変化(%)

図-2 人工ビーチ北側の枝状コモンサンゴ群集。無人航空機で撮影した画像に、トレースしたGPSの軌跡を重ねた。
図-2 人工ビーチ北側の枝状コモンサンゴ群集。無人航空機で撮影した画像に、トレースしたGPSの軌跡を重ねた。

図-3 備瀬西水深3mにおける、2013年から2016年の着底板タイル1面あたりの平均稚サンゴ群体数。
図-3 備瀬西水深3mにおける、2013年から2016年の着底板タイル1面あたりの平均稚サンゴ群体数。

図-4 備瀬西水深3mにおける、2013年から2016年の着底板タイル1面あたりの平均稚サンゴ群体数
図-4 備瀬西水深3mにおける、2013年から2016年の着底板タイル1面あたりの平均稚サンゴ群体数。

1)モニタリング調査

マンタ法調査は、造礁サンゴの分布概況を迅速かつ広域に把握するための調査法であり、環境省や沖縄県が実施している各種サンゴ礁調査の方法として採用されている。サンゴ礁の全域を目視するため、オニヒトデや白化現象といった攪乱要因も併せて把握できる。マンタ法調査で観察できる礁縁部では、平成27年と比較して、28年は全般的に被度階級が上昇した(図-1)。しかし、水族館前以南でオニヒトデの食痕が再び増加し、今後の推移に注意が必要である

2)フォトトランセクト調査

海底に設置したトランセクトラインに沿って一定の間隔で撮影した写真画像に基づいて、サンゴなどの底生生物群集の被度や面積構成比率を定量的に求める調査法である。
平成28年の合計サンゴ被度は、備瀬西区域で27年と比較して有意な増加がみられたのみで、全般的に大きな変化はなかった。科別では、備瀬西(3mと10m)、水族館前(3mと10m)、アクアポリス(3mと10m)、山川(3mと6m)でミドリイシ科の被度増加に有意差がみられた。
備瀬西の水深10m地点において、H28年の合計サンゴ被度は42.0%で(27年は37.4%)、調査地点中で最も回復がすすんでいる(表-1)。直近4年間は毎年間で被度増加に有意差がみられた。3mと同様に、ミドリイシ科の被度増加に有意差がみられた。

3)礁池調査

今回初めて導入した、無人航空機による礁池の撮影画像によってサンゴ群集や藻場の面的な広がりを視覚的に捉えることができた。
人口ビーチ北側の枝状コモンサンゴ群集の北西側に、これまで記録になかったパッチ状のサンゴ群集が点在していることがわかった(図-2)。
備瀬礁池北西側の枝状コモンサンゴ群落では、北東側への広がりが確認された。備瀬集落前の北側藻場では、北側で北西に広がっている藻場が確認された。
さらに、目視によるトレース調査より、備瀬崎のシコロサンゴ群集は西南西側が拡大し、全体としてはゆるやかに面積が拡大していることが明らかになった。備瀬集落前の海草藻場は、北側の藻場はゆるやかに拡大傾向にあり、南側の藻場は2013年から徐々に岸側へ縮小している。
出現したサンゴ類は全体で18属、群体形状等で区別した未同定の種を含め合計29種と昨年度の30種と比較してほとんど変わらなかった。枝状のコモンサンゴ属の出現頻度が最も高く、20地点で記録された。
底生動物は合計96種が出現し平成27年度と比較して出現種数は僅かに増加した。
海草藻類は合計36種が出現した。平成27年度よりも出現種数は僅かに増加した。

4)定着板調査

備瀬西区域と水族館・人工ビーチ前区域、アクアポリス区域の水深3mと10mに、タイル2枚を組み合わせた定着板10個を設置した。2016年5月13日に設置し、回収は沖縄島本島北部でサンゴ一斉放卵放精が確認された約1ヶ月後の8月8日に行った。回収後実体顕微鏡を使用してタイルの上面、下面、側面に付着している稚サンゴ群体数を数えた。
備瀬西では、平成27年の合計稚サンゴ群体数が際立って高いことがわかる(図-3)。水族館前の平成25年、26年のデータはないが、平成28年と27年の比較ではやはり平成27年のほうが約6倍(10m)ないし約11倍(3m)であった(図-4)。平成27年は備瀬西から水族館前にかけての海域におけるサンゴの新規加入が他の年と比べて多かった。
サンゴは着底してから2年後に直径数センチに成長する。2015年の新規加入の量が2年後のフォトトランセクト調査での幼サンゴ群体数(直径3cm以下)に影響を与えるのか、引き続きデータを蓄積し、着底後プロセスの重要性を評価したい。

3.夏季の高水温によるサンゴの白化

表-2 白化したサンゴ群体数の科別割合(%)
表-2 白化したサンゴ群体数の科別割合(%)

図-4 白化したサンゴ群体数の科別割合.エラーバーは標準偏差
図-4 白化したサンゴ群体数の科別割合.エラーバーは標準偏差

沖縄周辺海域の2016年の旬平均海面水温の平年差は例年より1から2℃高い状態が続き、1998年の状況と似ていた。
無人航空機の撮影画像からは、広範囲な白化は確認できなかったが、限られた範囲で白化したと考えられるサンゴ群集が確認できた。トレース調査やグリッド調査では、岸寄りの浅い場所のみ小規模な白化が見られた。今回のサンゴ類の白化は礁池内のごく限られた場所で、小規模に起こったと考えられる。
フォトトランセクト法による調査では、白化したサンゴ群体数の割合は、全ての地点(水深3m)で60%を超えていたが、地点間に大きな違いはなかった。(表-2)。
備瀬北、備瀬西ではキクメイシ科とハナヤサイサンゴ科、ミドリイシ科で白化した群体数の割合が高く、アクアポリス、山川港ではハマサンゴ科の白化した群体数の割合が高かった(図4)。


*1動物研究室

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