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ホーム総合研究センター平成28年度 事業年報 > 3)魚類等の生物多様性に関する調査研究

沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

海洋生物の調査研究

3)魚類等の生物多様性に関する調査研究

岡慎一郎*1 宮本圭*1

1.はじめに

琉球列島は魚種多様性が極めて高く、未だに分類学的に混乱しているものが多い。また,新種や日本初記録などの報告も相次いでいる。一方で、陸水域などの特殊な生息環境においても独特の生物相が形成されており、希少種なども多く含まれる。当事業では、琉球列島の魚類等の保全や自然史研究の発展に寄与するため、以下の取り組みを実施した。
なお、これら一連の調査研究により、平成27年度は6報の学術論文が受理された。

2.標本の維持管理および標本調査

図-1 「海のハンター展」でのホホジロザメ展示状況
図-1 「海のハンター展」でのホホジロザメ展示状況

当財団では琉球列島の魚類標本の収集・管理を通し、学術研究や普及・教育活動に役立てている。
平成28年度には希少なミツクリザメ等を含む400点以上の標本を新規登録した(図-1)。
また,国立科学博物館の企画展「海のハンター展」の目玉展示となったホホジロザメ全身液浸標本を出展し,来場者約33万人の盛況を得た(図-2)。
所蔵標本の学術利用として,外部研究機関からの標本の貸出依頼18件,来訪による標本調査10件に対応した。また,これまでに貸出等で利用された標本が利用された研究論文が8報発表された。

3.希少種の保護に関する調査

図-2 希少種ヤシガニ。強大な鋏脚を持つ。最大の個体の挟む力は300kgfを超える。
図-2 希少種ヤシガニ。強大な鋏脚を持つ。最大の個体の挟む力は300kgfを超える。

海洋博公園内に生息する希少種であり陸棲最大の甲殻類でもあるヤシガニ(図-2)の生態モニタリング調査を平成18年度から継続している。本年度は,普及啓発に有効な生態的側面となる鋏脚の挟力に関する研究成果を発表し,国内外のメディアに広く取り上げられ,注目度の高い成果を得た。
これらのほか,本島北部地区に生息するドジョウなどの希少淡水魚に関する調査も昨年度に引き続き実施し,その成果は科学雑誌にも掲載された。

4.備瀬地先周辺の魚類相調査

図-3 釣りによる採集調査状況
図-3 釣りによる採集調査状況

沖縄美ら海水族館目前に広がるサンゴ礁域を中心とした浅海域に生息する魚類を把握するために、採集調査による魚類相調査を平成27年度から引き続き継続しており,これまでに約320種の魚類を確認した(図-3)。次年度以降はこれらの(-4)。その結果、計14回の調査で250種以上の魚類が確認された。今後とも確認種数は増大すると見込まれており、次年度以降は異なる手法も取り入れた調査を展開する予定である。
また,これらの調査で採集された種不明の仔稚魚について,DNAの照合による種査定を行った。その結果,ベラ科やハゼ科などの多くの未記載の仔稚魚の形態が明らかとなった。これらの成果は随時,学術雑誌等で発表予定である。

5.環境DNA調査

図-4 深層水の採水。これだけの現地作業で,取水口周辺の深海魚の生息が確認できる
図-4 深層水の採水。これだけの現地作業で,取水口周辺の深海魚の生息が確認できる

任意に採水した環境水中に存在するDNAの塩基配列情報から、同環境に生息する魚類を特定する革新的技術を開発するため、千葉県立博物館等と共同研究を行っており,水族館の水から飼育種の大部分を検出した実績を上げている。
平成28年度には、久米島の沿岸水および海洋深層水研究施設の汲み上げ水の環境DNA調査を行い,沿岸水からは約400種の各種魚類を,深層水からは約80種の深海魚を検出した。とりわけ深層水の調査は,くみ上げた水を解析するのみという手軽さで,膨大な予算と時間を必要とする深海魚の調査ができた点が特筆できる(図-4)。

6.不妊化雄を用いた外来魚駆除試験

図-5 通称ティラピア。標準和名カワスズメ。アフリカ原産で,世界各地に帰化している。
図-5 通称ティラピア。標準和名カワスズメ。アフリカ原産で,世界各地に帰化している。

図-6 不妊雄による生息数現象の概念図
図-6 不妊雄による生息数現象の概念図

沖縄の陸水環境では、ティラピアなどの多数の外来種が在来種の生存を圧迫している。海洋博公園内の人工池においても、多くのティラピア(図-5)が生息しており、在来生態系とは程遠い状況にある。これらを駆逐し、在来魚を放流、増殖させることができれば、現在危機的状況にある在来魚の避難場所が創出できる。さらに、この取り組みは、園内における在来生態系の創出といった価値を公園に付することができる。
一般に、外来魚駆除の方法は、捕獲に頼る場合がほとんどであるが、国際条約の名古屋議定書(COP10)においても外来種問題が取り上げられ、外来種の効率的根絶法の開発が求められている。当財団では、これまでに研究で,遺伝子操作をすることなくティラピアの不妊雄を生産する技術を確立した。これら不妊雄を放流し,正常な雌と交配させることにより,生息数を減らし,最終的に根絶できる可能性がある(図-6)。そこで,海洋博公園の人工池を対象として,不妊化雄の放流によるティラピア駆除の有効性を検証するための実験を開始した。平成28年度は,採集調査による生息数減と資源の現況把握と,不妊化雄の生産を中心に行った。公園内の池における罠などによる採集で,現在まで約2000尾を駆除したものの,いまだ相当数の数が生息すると想定している。今後,当手法で駆除が成功した場合、魚類では世界初の事例となり、外部への波及効果も極めて大きいと考えている。


*1動物研究室

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