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ホーム総合研究センター平成28年度 事業年報 > 1)鯨類に関する調査研究

沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

海洋生物の調査研究

1)鯨類に関する調査研究

小林希実*1・岡部晴菜*1

1.はじめに

当財団では南西諸島における鯨類の生息状況や資源状態の把握を目的として、情報収集や調査を行っている。現在、沖縄本島周辺海域を含む南西諸島周辺では、全89鯨種の約3分の1に相当する30種が確認されている。これらの基礎情報を得ることは、鯨類に限らず海洋生態系の保護・管理を行う上で重要であり、ここでは本年度実施した同事業について報告する。

2.ザトウクジラ調査

図-1 調査風景
図-1 調査風景

図-2 共同研究者との打ち合わせの様子
図-2 共同研究者との打ち合わせの様子

沖縄本島周辺海域はザトウクジラの冬季繁殖海域として知られ、例年1~3月に本種の来遊が確認されている。本種は、尾びれ腹面の模様や後縁の形状が個体毎に異なっており、この特徴を利用した個体識別が可能である。当財団では、本種の来遊量や繁殖生態を明らかにするため、個体識別を主とした調査を1991年より継続している。
平成28年度の調査では、慶良間諸島周辺と本部半島周辺の調査海域合わせて、のべ536頭分の尾びれ写真を撮影することができた。毎年、撮影した写真と過去の写真とを比較することで個体識別カタログを作成、更新しており、これまでに約1500頭分の個体を識別している。
また、本種の沖縄と他海域間の回遊やその生態をより多角的に調査するため、国内外の各組織と情報交換、共同研究等を実施している。国内では、各地のホエールウォッチング関係者に尾びれ写真の提供を依頼している。28年度は、北海道、沖永良部、那覇の各関係者から、それぞれ4頭、11頭、111頭分の写真を提供頂いた。今後これらの提供写真と当財団のカタログとの照合を実施する。また、日本大学と共同でザトウクジラに付着するオニフジツボに関する調査も行った。
国外との連携では、フィリピンとロシアからザトウクジラ研究者を招聘し、共同調査を行うと共に(図-1)尾びれ写真の交換、照合を行った。28年度は当財団と同国の3組織共同で「ザトウクジラの繁殖海域と摂餌海域間の回遊と交流」についての論文を作成、投稿した(図-2)。

3.鯨類のストランディング調査

表-1 ストランディングが確認された鯨類
表-1 ストランディングが確認された鯨類

当財団では南西諸島における鯨類相を把握するため、鯨類がストランディング(漂着、迷入等)した際に、種や大きさ、場所等を記録している。平成28年度は、計4科5種が確認された(表-1)。
嘉手納町に漂着した体長5.3mのザトウクジラは、体長が性成熟個体(平均11~16m)に比べ小さく、亜成熟個体であると推定された。本種はこれまでに6例、今年で3年連続して沖縄本島で漂着が確認されている。現在、沖縄近海における本種の推定来遊数は増加傾向にあるため、今後も漂着や混獲が増加する可能性が示唆される。

4.地元ホエールウォッチング協会設立参画

沖縄県では主に本島中南部、北部、座間味の3つの地域でザトウクジラを対象としたホエールウォッチングが実施されている。本島中南部、座間味地域では、既存のホエールウォッチング協会に各事業者が参加する形で事業者間の連携が保たれている。近年の新規事業者参入の増加などを受け、北部地域においても事業の組織化を求める声が高まり、地元事業者が中心となり今回の協会設立に至った。当財団は、地元事業者との信頼関係やその調査実績から、協会の立ち上げや自主ルール策定に関する指導協力、勉強会を行うことで協会設立への参画した。北部ホエールウォッチング協会は、特にザトウクジラの保護を目的とした自主ルール運用やクジラの発見率を上げるためのネットワーク強化等を主な活動目的としている。鯨類資源の保全と観光資源としての持続的利用を目指すという点において、同組織と当財団の掲げる目的・目標には共通点が多くあげられる。今回の協会設立とその参画は、沖縄県の産業振興や鯨類を含む沖縄本島周辺海域の環境保全の実現において大変有益なものになると期待される。

5.ザトウクジラ会議の開催

図-3 会議の様子(トラック協会・那覇市)
図-3 会議の様子(トラック協会・那覇市)

沖縄県内のホエールウォッチング(以下WW)事業者を対象に「沖縄ザトウクジラ会議2016」を開催した(図-3)。4回目の開催となる28年度の会議では、「衛星タグで探る海の動物たちの行動」をテーマに、北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの三谷曜子准教授を講師としてお招きし「点と点とをつなぐために~天からクジラを追う方法~」と題して講演を頂いた。また、WWツアーにおけるサービス内容の質向上等に役立てて頂くことをテーマに、当財団が行っている鯨類の野外調査、板鰓類の衛星タグ調査の報告等について財団職員2名が講演を行った。県内の事業者ら16社51名の参加があり、特に質疑応答では、日頃WWツアー中で感じる疑問等多くの質問が寄せられた。



*1動物研究室

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